表向きの終幕、裏で起こる奔走

「不満だといった気持ちを隠すことすらせんのはどうかと思うが、却ってこちらも遠慮なく言いやすい・・・先程ダイクロフトの方々も申し上げていたが、ルーク殿一人を探すのにどれだけ人員を割くかに時間がかかるかを考えればあまりこちらとしても事を大きくしたくはないし・・・私個人としてもお前の暴走の為にルーク殿を巻き込むことなど許せることではない。それでもどうしてもルーク殿を探したいというのであれば、一人で探してくるがよい」
「私、一人で・・・!?」
「導師が同意するのであれば是が非でも止めていた所だが、導師も乗り気でないと言っているのであれば私に他の詠師陣にもルーク殿を探し出す案に同意するつもりはない。それでも探し出したいというのであれば自分一人でそうすればいい・・・それなら一応上司にあたる我々でも個人であるそちらの意思を妨げることは出来ぬからな」
「っ・・・ルークを、見捨てると言うんですか・・・!?」
「・・・そう言ったように今まで考えたり発言してきたのだろうが、その結果としてどうなった?先程の反応を見る限りではそうしてダイクロフトの方々にナタリア様達もそうだが、そのルーク殿当人に別れを言うことすら避けられて逃げることを選択されたのだぞ・・・お前がルーク殿の為だとかさもそれが正解だったかのように疑ってないようだが、お前以外の他の者の視点から見ればそう判断されても仕方ないかもしくは当然の物と見られた結果が今の状態なのだ」
「!!」
普段は温厚で厳しい言葉など使わないトリトハイムだが、ティアの態度に毅然と立ち向かうように話を進めていき、今にも飛びかからんばかりだったティアを驚愕に制止させた。



(・・・だから・・・結果として、私はルークに逃げられるような事をしていたっていうの・・・他の人から見たら、私は信用されないって見られて・・・!?)
・・・事ここに来て、単純明快なトリトハイムの言葉が一気にティアの胸に刺さった。トリトハイムは一応は味方で詠師という身分もあることもあるが、自分が人からどう見られているのかを全く考えずにいたことを言葉にされて認識したが為に。
ティアはようやくそこでルークがそんな目で自分を見ていたのだと考え、戦慄する。全く人の目を気にせずにいたことが、この結果を招いたのだということに。
「・・・どうやら少しは効いたようだが、どちらにせよルーク殿を探すならお前一人で勝手にするのだな。我々は表向きでも内密にでもルーク殿の件で人を動かすつもりはないし、もしルーク殿が仮に見付かったとしても今のお前の様子でルーク殿が首を縦に振る姿など想像出来んがな」
「・・・っ!」
「では導師、行きましょう・・・念のために言わせていただきますが、ティア=グランツの考えの為に人を動かそうなどと考えぬようお願いします・・・」
「・・・分かっています、それが彼女の為にならない以上にルークの為にならないと言うのは・・・」
「っ・・・!」
トリトハイムはそんな姿に辛辣に協力しない旨を伝えた後に場から共に退出しようと呼び掛けたイオンにもそうするように願い、その言葉に辛そうに同意しながら遠ざかる二人の姿に手を伸ばすことが出来ず、ティアはうつむいて拳を悔しそうに握るしか出来なかった。最早二人に反論及び信じてほしいという言葉すらかけることが出来ない・・・そういった気持ちになってしまったが為に・・・









・・・そして少しだけ時間が進んだダイクロフトへと場は移る。









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