表向きの終幕、裏で起こる奔走

「あ、貴方達・・・!」
「余計なことをしてくれた、そう言いたげで仕方無いといった様子ですね。ですが謝るつもりは我々にはありませんし、ルークさんが選んだことを僕達は尊重して手助けしただけです。貴女にやたらと付きまとわれる事もそうですが、アッシュさんが不毛な気持ちを抱く形で勝つまで付きまとうと言ったような展開など哀れだと思いましてね」
「んだと・・・!?」
その中でティアがわなわなと震えてきだす様子にヒューバートは挑発的とも取れる口調で返し、自身がやけに言われたこともありアッシュが苛立たしげに反応する。
「ハッキリ言わせていただくなら、見苦しいんですよ。ルークさんに対してだけやたらと敵対心を見せて自分が上であることにこだわり、ナタリア様の事も含め他のことに目を向けようとしない。それこそルークさんが貴方の事も含め、色々考えてきたというのにです・・・それなのに貴方は貴方にとっての雪辱や汚名を晴らそうとするばかり。そんな貴方に怒りを向けられるルークさんの方に気持ちが向くのは当然でしょう」
「てめぇ・・・!」
「怒るのでしたらお好きにどうぞ、喧嘩ならボコボコにされていいなら買いますよ。それにもうルークさんは貴方が探しても見つかるはずのない場所に行きましたから、貴方のその感情を向ける相手はいませんけどね」
「っ・・・どこだ、どこに行きやがったあの屑は・・・!」
「・・・この後に及んでまだルークさんへの対抗意識を捨てきれませんか。生憎ですがどこに降ろしたかはダイクロフトにいる人達しか知りませんし、もう数日前の出来事でとっくに降ろした場所からどこかに移っているでしょうから見つかるとはとても思えませんし誰もそこから先の行き先など知りませんよ」
「・・・くっ・・・!」
ヒューバートが更に挑戦的に話を進める様子にアッシュはルークに対して諦めきれない気持ちをぶつけるが、あっさり探すのはまず無理と言ってのけられたことに悔しげに歯を噛む。目の前のヒューバートに何を言われたところでもうルークがいないという結果が変わるはずもないと、そう理解してしまったが為に。
「・・・ことをしてくれ・・・」
「ん?」
「なんてことをしてくれたのよ貴方達は!!」
「「「・・・っ!」」」
「「「「・・・」」」」
そんな場の空気の中でティアがぼそりと呟いた声に誰かが聞き取れなかったといったように疑問の声を上げると、二度目に一気に怒りを頂点まで上げた怒声が辺りに響く・・・だがアッシュ達は驚きこそしていたが、アドリビトムの面々は全く驚くことなどない様子でその姿を見ていた。
「・・・なんてことをしてくれた、ですか。どうぞ、罵りたいのでしたらご自由に。ですがそれ以上を望むというのであれば、オススメはしませんよ。いくらここがダアトであって導師の御前であるとはいえ、攻撃されたなら僕らも黙って攻撃を受けるだけなんて事をするつもりはありませんからね」
「っ・・・!」
だがすぐにヒューバートから眼鏡を手で押さえながらその奥の眼光を鋭い物として告げられた言葉に、瞬時にティアは躊躇いを浮かべる。ヒューバートの威圧感に圧された部分もあるが、相手はヒューバートだけに留まらないでアドリビトムの面々も油断なくティアを見ているという状態であったが為に。
「・・・ねぇ、ティア。そうやってさも自分のいないところで勝手なことをやってだとか、自分の考えが狂わされたことが許せないだとか貴女の中では色々あるだろうけれど・・・聞いてなかったのかしら?アッシュもそうだけれど、貴女の態度があったからルークは離れていったということを」
「・・・っ!?」
だがジュディスが更に続けた冷ややかな視線からの言葉に、ティアはハッとした・・・アッシュが話をしていることで忘れかけていたが、ティアもルークが離れると決めたという原因だと言われたことを。









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