表向きの終幕、裏で起こる奔走

「・・・お疲れでした、導師に皆さん」
「すみません。ですがもう大丈夫です、無事に終わりましたから」
「無事に終わったこと自体は我々も見ていました。ですが重要なのはこれからのことです・・・今はまだいいでしょう。人々は何も不満など言い出せるような状況ではなかったからこそ場は至って平穏に収まったのですから。ですが時間が進むにつれて人々は次第に思うようになるでしょう・・・預言があった時代への懐かしみに、利便性を再び待ち望むような気持ちを」
「それは・・・そんなことに人々はならないと僕は思っていますが・・・」
「そうしないため、させないために貴殿方がいるのです。今話を聞いていた方々もそうでない方々も、世界のほとんどの人が何が起きてこのような状態になったかの経緯を一から十まで全て知っているなんてことはありません。そしてそれを知っているのはそれこそ我々を除けば、貴殿方各国の首脳陣と言った面々・・・どれだけの苦労が伴われて今があるか、それを知らない人々は訪れた不便に対して不満を持ちやすいのです。だからこそ苦労こそするでしょうが、昔の方が良かったという声を出させないようにしていただきたいのです」
「・・・はい、分かりました。僕もそんな事態にはしたくありませんから、肝に命じて動くようにしたいと思います」
・・・それで出迎えた一同の中から代表してヒューバートがイオンと話をするが、これからの不安についてを語るヒューバートの様子にイオンも次第に真剣な表情になり頷く。預言に第七音素の復活を望まれるのは好ましくないからこそ、自分達がちゃんと動かなければならないと理解する形で。
「・・・では我々は少し人が少なくなったらマルクトにキムラスカへと向かい、アッシュさんとナタリア様をお送りしたらダイクロフトへと戻ります。以降はもう会うことはないでしょう」
「そうですか・・・」
「待って・・・アッシュ達をキムラスカに送るなら私も付いていくわ」
「ティア・・・?」
そしてこれが最後と予定を話すヒューバートにイオンが寂しげに表情が変わるが、ティアが前に出て発言してきた事に怪訝な様子を浮かべる。



「・・・連れていく事自体は構わないと言いたいんですが、生憎ですがルークさんはもうダイクロフトにはいませんよ」



「「「「!?」」」」
・・・しかしヒューバートがその魂胆は分かっているとばかりに口にしたルークの事実に、ティアだけでなくイオンにアッシュにナタリアまでもが驚愕した。ルークがもういないということに。
「先に言わせていただきますが、これはルークさん自身が言い出したことに加えて僕達がそれに協力したことです。一方的に追い出しただとか、勝手に出ていったみたいな事を言われるのは違うとだけ言っておきます」
「な、なんでそんなことを・・・」
「アッシュさんにティアの追求をかわす為ですよ・・・どうせという言い方は好ましくないと分かって言いますが、キムラスカにアッシュさん達が戻った後にどういった所でルークさんを探しだそうとするなんて展開が待ち受けているのは明白でしたからね。それにダイクロフトにそのままいたならティアがルークさんを無理にでも自分の所に引きずり込もうとするのは目に見えていましたから、ローレライ解放の前にダイクロフトに残った後に地上に降りて姿を消してもらったんです。これ以上煩わしい事にならないよう、させないようにするためにと」
「「「「・・・っ!」」」」
ヒューバートはその反応にすぐに訂正にかかり一番最初に気を取り直したイオンが訳を問うと、ルーク当人と話した上でアッシュとティアの二人を避けるためとの回答にまた四人は驚愕する。影でそこまで話をしていて行動していたこともそうだが、そこまで二人の事を警戒していたと言うことに。









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