表向きの終幕、裏で起こる奔走

「・・・ですが最早モースはいません。彼がいない今、預言保守派の皆さんには彼の代わりと言うわけではありませんが、世界の行く末を見ていっていただきたいのです。預言を詠むことなく、その預言に詠まれた滅びを招くことのない世界を・・・」
‘‘‘‘・・・’’’’
ただティアの考えをよそに話を進めていくイオンの切なる願いの声に、聴衆達も黙って聞き入っていた。預言を尊び疑うことすら許されないといった過激な思想を持つ者など、どこにいるのかと言うほど真剣に。
「・・・そんな世界にするためにも、我々はユリアが詠んだ預言を本来の意味で捉えて滅びを避けるために動いていかなければなりません。そしてその為にもローレライを送り出す必要があります・・・彼自身が望んでいることと、預言を始めとするとの第七音素を用いた技術に習慣への最後の別れを告げる為に」
‘‘‘‘・・・っ!’’’’
そして次が最後だといよいよローレライを送り出すとの言葉に、聴衆達も固唾を飲むよう緊張の面持ちを浮かべる。
「すみませんでした、ローレライ・・・こちらの都合に合わせてもらって」
『いや、構わん・・・我としても人々が預言から脱却して滅びを避けてくれることが何よりの望みだ。だがその為の道を切り開くのは今ここにいるそなたらだ・・・それを忘れないでいてほしい』
「はい、ローレライ」
『ではルークよ、鍵は我が持っていくぞ』
「っ・・・」
その上でイオンはローレライと言葉を交わし、頭を下げた後にそのローレライが言葉を紡ぐとすぐにアッシュの手元から鍵が離れていき、軽く驚く姿など気にせず鍵はローレライの体に吸い込まれていき姿が見えなくなった。
『さて・・・我はもう行かせてもらう。あまり長々と話すような事は望まぬのでな。では、さらばだ』
‘‘‘‘っ!・・・’’’’
そこから多少は話に時間を使うかと思いきや、簡潔でいて足早に・・・少しの言葉を残した後にローレライは一気に音譜帯へと上昇し、あっという間に場からいなくなったその姿を聴衆は半ば呆然としたように見上げていた。



(・・・本当にすぐに行ってしまったわね・・・でもこれからの事を考えるとこれくらい早い方がいいのかもしれないわ・・・一応警戒はして誰も行動に起こしてはいないけれど、長くなったらどうなるか分からなかったかもしれないし・・・)
・・・そんな光景を見ながらティアは内心でこれでいいと考える。時間があれば変な事になる可能性も有り得たと。
(後は・・・)
「・・・皆さん、お集まりいただきありがとうございました。ローレライは今皆さんが見られたように音譜帯に昇り、我々はそれを見届けました。これにてこの場は閉会になります・・・ですが先程申し上げたこと、これを皆さんよく考えてこれから生活してください。ではこれで失礼します」
(・・・うん、これでもう戻ることが出来るわね。そして後は人がいなくなったのを見計らって、ダイクロフトに戻ってルークに会いに行かないと・・・!)
それでイオンが場はおしまいだと締めに入る様子を見ながら、次の事についてをティアは考える・・・ルークに会い、どうにか心変わりをさせることを諦めない形で・・・









・・・それでイオン達は教会の中に入り、アドリビトムの面々と顔を合わせる。









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