表向きの終幕、裏で起こる奔走

「・・・それで今こちらにいるルーク殿の元に、ローレライが預けた鍵と共にローレライがいます・・・ローレライを呼び出していただいてよろしいですか?」
「あぁ・・・出てこい、ローレライ・・・!」
『心得た』
‘‘‘‘・・・っ!’’’’
・・・そして話は進んでイオンがアッシュ呼びではなく『ルーク』呼びでアッシュを呼び、その声に答えて鍵に呼び掛けるとローレライが声と共にイオン達の上に現れ、聴衆はその姿に圧倒されたようなどよめきの声を漏らす。
「・・・ローレライは長い間待ち続けていたとのことです。自分がラジエイトゲートから解放されること、プラネットストームが止まること、そして預言からの脱却を世界が果たすことを・・・元々預言をユリアが詠んだのは先に言ったよう、滅びが詠まれた世界の行く末を変える為の物だとの事です。ですがユリアとローレライの考えとは裏腹に預言はその中身がことごとく的中していくことから、いつしか預言の通りにすることこそが世界の繁栄に繋がるという今の見方になっていきました・・・」
‘‘‘‘・・・’’’’
そこからイオンがローレライとユリアが経験してきた道を自分が歩んだかのように気持ちが込もった話をすると、聴衆もその気持ちに引っ張られたように切なげな表情になる。
「ですが先の謡将の事件から様々な偶然が絡まり、私達は様々な事実を知り行動をし、目の前に広がる滅びという可能性に繋がるような事をどうにかしてきました・・・その最中で大詠師が亡くなった事に関しては遺憾な事でした。彼は預言保守派の筆頭であり預言を遵守するその姿勢から簡単には預言が滅びが詠まれた物であるとは信じられなかったでしょうが、だからこそ彼にもその事実を受け止めた上で動いていって欲しかったと私は思っていました・・・」
‘‘‘‘っ・・・’’’’
更にここでモースの事を真から思って言葉を漏らすイオンに、聴衆もまた釣られて表情を辛そうに崩す。



(・・・この辺りはイオン様でなければ言えない言葉よね・・・私としては以前のあの姿を見てしまったし、何より手段を選ばないモース様が今の状況で生きていたならそれこそここがどうなるか分からないわ・・・)
そんな光景を横から見ていたティアはイオンに対しては素でそう出来ることに関心はするが、モースが前にしてきたことにその末路と姿を知っているためにそうは思えないと感じる。
(・・・そう考えると本当に忌々しくはあるけれど、あの人達がモース様を殺したことは効果的だったのね・・・と言うよりあのタイミングであの人達が行動していなかったら、どうなっていたのかしら・・・?)
ただアドリビトムの面々に対する苛立ちを浮かべる中でふとティアは考える。モースがあの時に殺されていなかったならどういった状況になっていただろうと。



・・・恐らくどころではなくまず間違いなくモースはルーク達の邪魔になるように動くばかりか、それこそ捕らえるだけなどして生きていたなら何としてもローレライの奪還を始めとしてこの場の破壊に走ったことだろう。だがティアはそこまでの考えに至れず、まず間違いなくラジエイトゲートでの時のような直接対決の形でなければ自分が手を下す算段については考えていなかったのは目に見えている・・・つまりユーリ達の判断もそうだが、自分が手を汚してでもモースを殺すと考えていたルークの方がティアより十分に物事を把握して動こうとしていた証拠でもあった。と言ってもそんな事などティアは考えていないし、誰もそんなことなど指摘する者もいないのでティアがその事実に気付ける筈もなかった。









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