表向きの終幕、裏で起こる奔走

・・・ティアが保険をローレライにかけたことに一安心し、一先ずはゆっくりと休む事にした。何をするにしても明日からと言うように考えて。

そして翌日、ティアはアドリビトムの面々と共に導師の私室に集められた。



「・・・お待たせしました、皆さん。今日この一時間程後、ダアトの人々の前でローレライを送り出す場が開かれる事になります」
「「「「・・・」」」」
それで部屋の中でイオンが真剣に話を切り出す様子に場にいる面々は真剣に頷く。
「ただそれでなのですが、アッシュ・・・貴方には少し着替えて欲しいという要望がトリトハイム達から出てきました」
「何・・・いきなりどういうことだ、導師?」
「その、トリトハイム達は貴方が『ルーク=フォン=ファブレ』という立場に戻るのに、いつまでも神託の盾の服を着ているのはどうなのかという風に言ってきたんです・・・インゴベルト陛下も貴方に着替えるようにと言ったにも関わらず、今の姿格好のままだからこの際にもうその服を変えてもらった方がいいのではないかとも・・・」
「くっ・・・!」
しかしその前にとイオンが多少口にしにくそうながら服を着替えるように願うと、アッシュは複雑そうに表情を歪めながらも否定の言葉を返せなかった・・・一度はインゴベルトに言われたがそれでも着替えなかった今の服装について、もう変えなければならないから逃げることは望ましくないと言われたも同然の為に。
「・・・とりあえずこの話の後で適当な服を用意してもらっていますから、始まる前に服は着替えておいてください。後はダイクロフトの皆さんの立ち位置に関してなんですが・・・」
「その事に関してなんだが、僕達はその場に一緒に出ることもないし、僕達の事も何も言わないで欲しいんだ」
「えっ・・・どうしてですか?貴方達のおかげで色々と状況が動いてきた面があるというのに・・・」
イオンはそんなアッシュに軽く言葉をかけてアドリビトムの面々に話し掛けるが、クレスの答えに何故そんなことをと動揺を露にする。
「僕達の目的は英雄扱いされることでもなければ、ダイクロフトに行けたり住民がいるなんてことを知ってもらうことじゃなくあくまで預言を変えることだからね。だから別に僕達はその場にいるような理由もないし、後々の事を考えれば僕達がそうしたなんて言ったらまた僕達が何か起きたら解決する・・・なんて風な風潮を作られるのも避けたいんだ。自分達が困った時にはダイクロフトの住民が何とかしてくれるなんて期待をかけられても、今回が失敗出来ないって準備をしてたのもあってたまたまうまくいっただけだから次も上手くいくなんて限らないし、何よりその次の時に僕らが行動する・・・なんて事態は望んではいないし、その時に僕達がいるかどうかという話になるからね」
「・・・分かりました。では皆さんの事については何も言いませんし、以降も皆さんに頼るような事が無いようにしたいと思います」
しかしクレスが真摯でいてちゃんと考えを持ってのことだと分かるような話で返すと、イオンもその空気に当てられてか真剣に頷く。



(あまり信じきれてはいなかったのだけれど、本当に以降は関わる気はないのねこの人達・・・その方が好都合だから私としてはありがたいけれどね)
そんな光景を見ていたティアは内心でほくそ笑む。邪魔者がこれでいなくなるという喜びで。









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