鬼の居ぬ間に

「とりあえず気を取り直してください、エステルさん。もう終わりも近いんですし、これ以上あの人に構っていられる時間もありません。むしろ感情として納得は出来ないとしても、理屈ではちょうどいいと思うようにしてください。ティアは下手に情をかけるよりはいっそ突き放す方がこちらにも向こうの為にもなるのだと」
「・・・はい・・・」
そんなエステルを見かねてジェイも考えを変えるように言い、エステルも力なく頷く。理屈として見捨てる以外に無いというか、ティアを見捨てた方が互いの為になると。
「・・・まぁそれはそれとして考えるにして、一先ずは後片付けに入ろうか。明日になりゃダアトでローレライの見送りがあって、そこからアッシュ達を送り届けるって流れになった後俺達も少しして戻るんだしあまり時間もかけてられないはずだぜ?それで俺様達の行動を知られて、余計な勘繰りをティアちゃんにされたらこっちも困ったことになりかねないしさ~」
「・・・うん、そうだねゼロス。ただ一応というか、下のクレス達にも報告に行った方がいいんじゃないかな?ローレライはクレス達に接触出来ないみたいに言ってたけど、この事について話をしに行って向こうにも事情を把握してもらった方がやりやすいだろうしさ」
「そうですね。では僕が後で下に降りていって話をしに行こうと思います。向こうもこちらがこうすると伝えられておいた方が後々やりやすいでしょうから、少しこれからどういう流れで行くかと話し合った上で向かいますよ」
「じゃあお願いするよ、ジェイ」
ゼロスはその空気を変えるように後片付けを切り出し、ジーニアスが納得しつつ発案した報告の案にジェイが自分がと切り出し、一同はジェイに頼むといったように頷く。



「・・・何て言うか今更だけど、最初にこっちに来た時に考えてたのと違う感じになったな・・・直接ルークを助けてきた訳じゃないから何とも言えない部分もあるけど、こんな風にティアにすごく警戒するとは思ってなかったしよ・・・」
「まぁそこはそれこそ今更だろうさ。こうなったからにはあのティアに全てを知らせるなんて事をしたらルークが危険になるだけだったからね。でももうルークはいないし、俺達もさっさと撤退するつもりでいる・・・こうしてティアの目が届かない内にね」
「こういうの何て言ったっけ・・・鬼の居ぬ間に選択、だったっけ?」
「・・・何か合ってるようで合ってない気がするけど、まぁそれでいいと思うよ」
そんな光景を見ていたロイドがそっと呟く様子にジョニーが大丈夫といったように言うのだが、微妙に分かりにくい間違いをする発言のニュアンスを感じ取って何処と無く力の抜けたようにジョニーはなる。選択でも洗濯でも、大して意味が変わらないからいいかという気持ちで。















焔は選択して去っていった



残るは彼を追い、助けてきた面々



彼らの仕上げも近い



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