鬼の居ぬ間に

『だがその珠についてはアッシュ達もそうだが、他の者達に言うこともそうだが持っていることも悟らせるような事はするな。ピオニーも言っていたしこのダアトで音譜帯に昇る以上は我の事を一度でも呼び戻せる物があると知られたなら、良からぬ事態を招く可能性が考えられるのでな』
「っ・・・それは分かったけれど、ここでの会話についてはどう説明するというの・・・?」
『・・・自分の言い訳くらいは自分で考えろ。我は我で他の面々には誤魔化して黙っておくようにするが、そこまで考えるのは我と話をしたいと言い出したそなたの責任だろう。そこまでは面倒を見るつもりはない』
「・・・分かったわ・・・」
それでローレライは口止めについてを約束させるのだが、ティアがどう説明するかと切り出した事に筋違いだろうと突き放すように返すと渋々といった様子で頷く。
『それでは話すことも終わっただろうからアッシュの元に行く・・・と言いたいが最後に一つ聞かせてもらいたい』
「え・・・何かしら?」
『答えたくないなら答えないで構わん・・・何故いきなり我と契約をしたいとの考えに至った?その点に関しては聞いてなかったから、聞けるなら聞きたいと思ったのだが・・・』
「・・・それは・・・(どうしよう・・・ローレライはあの人達なんかと比べるまでもない程に私に親切に接してくれてるし、事情を話せば協力はしてくれるかもしれないけれど・・・)・・・言えないわ、悪いけれど・・・」
そして帰る・・・という前にローレライが契約の理由についてを聞きたいと言い出し、葛藤こそありつつも結局は言わないとティアは選択して首を横に振る。やはり自分の考えを誰かに易々と言えるはずがないと。
『・・・そうか。ならいい、もうアッシュの元に戻してくれ』
「・・・分かったわ」
ローレライはその答えに追求をせず戻すようにと言い、ティアもすぐに頷く・・・もうこれ以上会話をするような空気ではないと両者共に、感じたが為に・・・









・・・それでティアはアッシュの元を訪れ、鍵を返して部屋に戻っていった。その際にアッシュから厳しい視線を向けられたが、結局は何も返せぬままティアはその場を立ち去った。何かを言いたげな視線と表情を残して・・・



『(・・・聞こえるか、ニアタよ)』
(聞こえるが、何だ?ローレライよ)
『(先程ティアが我々に対して行った事に関して話をする、少し聞いていてくれ)』
(分かった)
・・・それでアッシュに鍵として持たれて言葉を交わすことなく部屋に入れられたローレライは、ニアタと通信をする。先程のやり取りについてを全部さらけ出すために。






(・・・成程、そんなことが・・・)
『(薄々予感はしていたことだが、やはりティアはもしもの場合・・・つまりはルークがいないと知った際には我を呼び出し、無理矢理にでも再び過去に自身を送らせようとしてくるだろう。理由についてを無理に聞かないと言ったら言う気はないと案の定口にしたのがいい証拠だ・・・散々今まで何度もそれで問題になってきたのに、我が逃げ道を用意すればすぐに食い付いてきたからな)』
(それが却って自身の不利に繋がっていることになど考えることもなく、ただ言わなくてもいいならそうすればいい・・・下手に取り繕うのも問題ではあるが、何も取り繕うこともしないことがどのような結果を生むかを全く考えもしないことがどれほど愚かな事かも考えもせずか・・・)
・・・そして話も終わり、ローレライが先程のやり取りで見せた甘さについてはわざとと言ったことにニアタはティアに対する厳しい言葉を紡ぐ。考えもなくただ自分の中の物を大事にしようとすることが、その大事にしようとする物を露にしてしまうという本末転倒な結果を安易に招いたということに。









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