鬼の居ぬ間に

「お待ちになって・・・一体何をお話になられたいのでしょうか、ローレライと?」
「それは・・・少し話をしたいだけよ。聞きたいことがローレライにあるからちょっとだけ話がしたいの」
「では二人きりではなくとも今言えばよろしいのではないのですか?やましいことなど無いはずでしょう、貴女のその言い方では」
「っ・・・!」
だがそんな時に横からナタリアが警戒に満ちた声と視線による問い掛けが入り、ティアは苦い表情を浮かべる・・・ナタリアからすれば今までのティアの様子もあるがアッシュからわざわざローレライを引き剥がそうとする怪しさが気になるのだろうし、ティアはやはり自分の考えていることを正直に明かしたくはないからである。
「・・・ねぇ、ティア。一ついいかしら?」
「っ・・・何かしら?」
そんな時に笑顔を浮かべたジュディスが問い掛けを向けたことに、ティアは焦りを隠そうとしつつ顔を向ける。
「その話の中身については問わないわ。けどそのローレライとの話が終わったらアッシュの元に何事もなく鍵共々返して、音譜帯に見送るのよね?」
「・・・何を聞くのかと思えばそんなこと・・・私はただローレライと話をしたいだけよ。変なことをするつもりはないわ」
「あの、ジュディス・・・どうしてそんなことを・・・?」
ジュディスは問いを向けてティアはそんなことをしないと強く返すが、ナタリアは何故こんな質問をと怪訝そうに聞く。警戒をしているのかそうでないのか、ジュディスの様子から判断がつきにくい物だった為に。
「もう今更でしょう?ティアが何かをしたいという時に事情を言わないことは。それならローレライが利用されないだったり無事に解放されるなら、後は別に彼女の言う通りにしてもいいと思ったのよ。明日になればもう終わることに必要以上に気を張る必要はないでしょうし、アッシュが鍵とローレライを無事に受け取ったならそれ以上の事もないでしょうしね」
「・・・そう言うことなら俺も賛成してやる。もうこいつと一々言い合いするのにも飽きたからな・・・何を話すかは知らねぇが、さっさと話すことを話終わったら鍵を持ってこい。いいな?」
「っ・・・分かったわ・・・(思わぬ所から援護が来たけれど、素直に喜べない・・・けどこれはチャンスでもあるのだから、素直に受け止めないと・・・!)」
ただジュディスが口にしたのはもうその真意を知るよりも最低限の警戒だけで流した方がいいと言う物で、アッシュもそれに乗ったとばかりに鍵をティアに押し付けるように渡し、そのティアは釈然としない気持ちを抱きながらもチャンスと考える。一応これで周りからの反対が無くなった状況であるために。









・・・それでアッシュから鍵を受け取ったティアは部屋が用意出来たというイオンからの言葉を受け、自分が使う部屋へと入った。



『・・・さて、ティアよ。わざわざこのような形を取ってまで我と話をしたいと言い出した理由は何だ?』
「・・・その話をする前に約束してほしいのだけれど、これから話す中身に関しては誰にも言わないで。お願い」
二人になったところで鍵に入ったまま用向きを問うローレライに、ティアはまずは約束を願う。誰にも話の中身を明かさないでほしいと。
『・・・そなたに事情が何らかあるのは理解は出来る。だが流石に話の中身を全く聞かぬままと言うわけにそう約束することは出来ぬ・・・まずは話を聞かせてもらい、我も納得出来た上で協力出来ることであれば口をつぐもう。我も出来ないことは当然あるのでな』
「・・・分かった、まず話をさせてもらうわ」
しかしただ言うことを聞くわけにはいかないと慎重な姿勢を見せるローレライに、ティアも仕方無いとしながらもまずは話をすると不満げに漏らす。









.
16/21ページ
スキ