鬼の居ぬ間に

(もうっ!・・・でも仕方無いから考え方を変えないと・・・もし詠師六人がすぐにでもローレライの見送りに賛同したならどうなるのかしら・・・?)
そんなイオンを止められずにいたティアは内心苛立ちを浮かべるが、それでも少しは冷静に行こうとこの後の展開についてを考える。
(・・・もし詠師の方々が賛成をしてすぐに見送るとなったら、もうローレライを引き留める機会はない・・・私としてはそんなことになるのなんて望んでなんかいない・・・どうにかしてすぐにという話の流れになったなら、少しでも時間を稼いでローレライと二人になれる時間を取って・・・後の保険の為にユリアの譜歌でローレライと契約をしておく・・・今はエルドラントもそうだけど、フェレス諸島も兄さん達は作ってないだろうから第七音素が大気から無くなりつつある今そうしないとローレライを呼べなくなる可能性が高いと思うから・・・!)
そして出てきた結論は即座のローレライの見送りを引き留めると共に、自身がローレライと契約を結ぶ時間を是が非でも設けなければならないと強く思うものであった。もしまた駄目ならまた過去に戻る・・・その為に有無を言わさずに動く為にと。






・・・それから少しして、イオンと共にトリトハイムが姿を現した。
「・・・お待たせしました、皆さん。話をした詠師の中の代表としてトリトハイムに来てもらいましたが、簡単に言うなら明日にしてくれるなら準備が出来るそうです」
「準備、ですか?」
「はい・・・我々詠師陣は導師共々今のダアトに混乱が起こらないようにと動いてはいますが、それがいきなりローレライが現れたが音譜帯に昇るのを見送るために急遽場を作って問答無用にその姿を見送る・・・などとしたなら後で話を聞いたり、その瞬間を遠目に見るなどしたダアトの者からのどういうことだとの押し掛けが起こることは容易に想像出来ます。かといってその準備の為に何日もかけて喧伝したならば、ピオニー陛下がおっしゃられたように過激な預言保守派がどのような手段を持ってでもローレライを奪取せんと大規模な襲撃の計画を練ってきて、大事になりかねない可能性もあります。ですので最低限人を集めるだけは集めはするものの、そういった襲撃を避けるという意味で明日にしていただきたいのです」
「成程・・・そういうことなら明日で構いません。元々こちらからお願いに来ている立場ですから、無理を言えませんからね」
それでイオンが明日と言ってトリトハイムがその説明を詳しくすると、クレスを筆頭に一同は大丈夫と頷く。
(時間があるのはいいけれど、それも明日まで・・・取りあえずこの後にアッシュに話をして、どうにかローレライと話を出来るようにしないと・・・!)
その中で安堵はしつつも一応の時間制限についてを自覚しつつ、ティアはアッシュへの接触についてを考える。









・・・それで話が進んで今日は準備をするから何か用が無ければダアトに泊まればいいとイオンに言われ、一同はダイクロフトに戻る理由もない為にそうすることにした。



「・・・アッシュ、ちょっといいかしら?」
「あ?何だ?」
「少しでいいのだけれど、鍵を私に貸してローレライと二人で話をさせてもらえないかしら?」
「・・・何だと?」
それで部屋を用意するから待つように言われる中でティアは早速アッシュに話し掛ける。ローレライと話をしたいからと直球で申し出る形で。









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