鬼の居ぬ間に

・・・ルークより覚悟の程を聞かされ、インゴベルトの中にはアッシュを是が非でもキムラスカに拘束をするという考えと共に、ルークを守らねばならぬという気持ちもまた生まれていた。その上で更に言うならば、先程のやり取りでアッシュに対して絶対に何もしないから大丈夫などということなどまずないだろうという考えも抱いていた。

インゴベルトとしてはアッシュに対する気持ちがないとは言わない・・・だがルークと比べて気持ちの在り方に差がありすぎることもそうだが、自分が気に食わないというだけであぁまでもルークを敵視する目を隠しもせず思い直しもしない態度を見せられては、アッシュの気持ちを優先する気になど到底なれるはずもなかった。わがままで子どもっぽい感情のままにルークに怒り、自分の手で排除するまで納得しないだろうアッシュの気持ちを優先するなど。

・・・もし百歩譲ってルークを殺してアッシュがまるで別人のように大人しくなるとしたとしても、そんなことを認めるつもりはインゴベルトにはない。アッシュの為にルークが犠牲になることは無いというよりもう既に身を引いて目の届かない場所に行くと決定したのに、それを全く見もせず考えもしないようなアッシュの勝手でいて一方的な怒りなど最早インゴベルトからすれば優先する価値など一切無いのだ。

だからこそインゴベルトは強く決めている、どうアッシュから思われようとルークの為にも自らがいる内は勝手をさせるような事はしないと・・・









・・・そんな風にインゴベルトが現在思っていることになどティアの考えは至らないまま時間と場は移り変わり、一行は最後の目的地であるダアトに来た。



「・・・ローレライをここで見送る、ですか・・・」
「はい、それでどうでしょうか?」
「・・・少し待ってください。僕は賛成ではありますが、詠師一同にも話を通してどうするか決めないと段取りを組めませんから」
「・・・イオン様が決めればそれでいいのではないのですか?」
・・・それで一連の流れについてを話終わって詠師に話をすると切り出したイオンに、丁寧な問い掛けのように思えるが詠師に言う必要は無いだろうと軽んじるような声色でティアは疑問を口にする。
「それは出来ないのです、ティア・・・最近は色々あって僕がダアトにあまりいれなかったこともそうですが、何よりモースが死んだということが大きな問題となっていて・・・少しは落ち着いてはきましたが、それでもまだその余波が残っていてあまり勝手に何かをするのは望まれない状況にあるんです。貴殿方にプラネットストームの停止を任せたことは後で報告でも良かったのですが、流石にダアト内でローレライの見送りを行うのを僕の判断だけですぐに行うには無理があります」
「・・・っ!(・・・キムラスカにマルクトとすぐに許可が下りたから大丈夫だって思ったら、そんなことになってるなんて・・・!)」
しかしイオンが申し訳なさそうに出来ない理由を口にしたことに、ティアは反論は出来なかったが内心面倒だとばかりに苛立ちを浮かべる。そんなことに時間を取られねばならないのかといったように。
「とりあえず皆さんはこちらで待っていてください。詠師を呼んできますので・・・」
それでイオンは反論が無いならと部屋の外へ出ていく。詠師達を呼ぶために。









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