鬼の居ぬ間に
・・・それで話も一通り終えたと言うことですぐに一同はグランコクマを後にし、ダイクロフトを経由してバチカルに向かった。
「・・・ふむ、成程・・・ピオニー陛下の案によりダアトでローレライを見送るためにこちらに先に来たと言うわけか」
「そうなりますが、インゴベルト陛下はどのようにお考えですか?」
「・・・こちらもそれで問題はない。特にこちらでローレライを見送らねばならぬと言う理由もないからな、ダアトに行ってそのまま見送って来てもらえればよい」
「そうですか、分かりました。そうさせていただきます」
・・・それでピオニー同様にローレライに出てもらう形で話をした一同はインゴベルトの返答を受け、ヒューバートを代表として頭を下げる。
「では我々はすぐにダアトに向かいます」
「待て・・・少し頼みたいと言うか、聞いてほしい事がある」
「何でしょうか?」
「いや、そなたらにではなく・・・もうルークの姿が無いことからアッシュ、そなたのことはルークと呼び名を戻すことにするが・・・ルークよ、ローレライとその鍵はダイクロフトの面々の元に預けてバチカルにいるようにしてはくれぬか?」
「は?・・・な、何でそんなことを・・・?」
それで早速ダアトにと退散しようとした一同だったが、インゴベルトが呼び止めた上でアッシュに意を決したように話をしてきたことに当人は戸惑うばかりである。いきなりどうしてそう言ってきたのかと。
「・・・そなたの心情としては最後まで済ませてから戻りたいだとか、そういった気持ちがあるかもしれん。だがローレライの口振りでは譜陣からの解放の時はまだともかくとしても、音譜帯に行く際にそなたの力はいらぬのであろう」
「・・・それは・・・」
『いるかいらぬかで言うなら後は我の力のみで事足りる。その点に関しては問題はない』
「そうか・・・」
「っ・・・」
インゴベルトはその理由に関してを話すのだがどうにも歯切れが悪いアッシュにローレライが代わりとばかりに答えを返し、インゴベルトが納得する傍らでアッシュは何故言うのかといったような視線をローレライに向ける。おそらくアッシュはインゴベルトが何を言いたいのかを何となくは察した上で、その言葉に今は素直に従いたくはないのだろう。
「・・・要は何を言いたいのかと言えばルーク、そなたにはもうここに残ってほしいのだ。特に役割が残っていないのならこちらに戻って早く馴染んでほしいという気持ちも嘘ではないが・・・本音を隠さずに言うなら、そなたが変心を起こさない内にバチカルに残るようにするために」
「・・・やはり、そういうことですか・・・」
そしてインゴベルトが続けた言葉に間違いではなかったと、アッシュは苦々しげに小さく漏らす。逃げられる可能性を考慮されるような状態であり、自身としてもまだ吹っ切れてない上にまだ自由にありたいという気持ちがアッシュにはあったために。
「無論、まだ今はそうはしたくはないであろうことはそなたの姿から分かる。だが敢えてそれでも言わせてもらうが、今のそなたは控え目に言ってもキムラスカに戻ることに乗り気ではないようにしか見えぬ・・・だからこそそういった気持ちがあるとしても、あえてここで戻ってほしい。もしローレライを見送る途中か後にでも心変わりを起こし、やはりキムラスカに戻らないといった結論と共にどこかに去るような展開になるのはこちらは望んではおらんからな」
「・・・俺は、そんなことは・・・」
「ア、ルーク・・・」
インゴベルトはそんな気持ちがあるだろうからこそこう言い出した上で真剣にそうするようにしてほしいと願い、アッシュが逃げ出さないとは言い切れない様子にナタリアが悲し気な面持ちを浮かべる。
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「・・・ふむ、成程・・・ピオニー陛下の案によりダアトでローレライを見送るためにこちらに先に来たと言うわけか」
「そうなりますが、インゴベルト陛下はどのようにお考えですか?」
「・・・こちらもそれで問題はない。特にこちらでローレライを見送らねばならぬと言う理由もないからな、ダアトに行ってそのまま見送って来てもらえればよい」
「そうですか、分かりました。そうさせていただきます」
・・・それでピオニー同様にローレライに出てもらう形で話をした一同はインゴベルトの返答を受け、ヒューバートを代表として頭を下げる。
「では我々はすぐにダアトに向かいます」
「待て・・・少し頼みたいと言うか、聞いてほしい事がある」
「何でしょうか?」
「いや、そなたらにではなく・・・もうルークの姿が無いことからアッシュ、そなたのことはルークと呼び名を戻すことにするが・・・ルークよ、ローレライとその鍵はダイクロフトの面々の元に預けてバチカルにいるようにしてはくれぬか?」
「は?・・・な、何でそんなことを・・・?」
それで早速ダアトにと退散しようとした一同だったが、インゴベルトが呼び止めた上でアッシュに意を決したように話をしてきたことに当人は戸惑うばかりである。いきなりどうしてそう言ってきたのかと。
「・・・そなたの心情としては最後まで済ませてから戻りたいだとか、そういった気持ちがあるかもしれん。だがローレライの口振りでは譜陣からの解放の時はまだともかくとしても、音譜帯に行く際にそなたの力はいらぬのであろう」
「・・・それは・・・」
『いるかいらぬかで言うなら後は我の力のみで事足りる。その点に関しては問題はない』
「そうか・・・」
「っ・・・」
インゴベルトはその理由に関してを話すのだがどうにも歯切れが悪いアッシュにローレライが代わりとばかりに答えを返し、インゴベルトが納得する傍らでアッシュは何故言うのかといったような視線をローレライに向ける。おそらくアッシュはインゴベルトが何を言いたいのかを何となくは察した上で、その言葉に今は素直に従いたくはないのだろう。
「・・・要は何を言いたいのかと言えばルーク、そなたにはもうここに残ってほしいのだ。特に役割が残っていないのならこちらに戻って早く馴染んでほしいという気持ちも嘘ではないが・・・本音を隠さずに言うなら、そなたが変心を起こさない内にバチカルに残るようにするために」
「・・・やはり、そういうことですか・・・」
そしてインゴベルトが続けた言葉に間違いではなかったと、アッシュは苦々しげに小さく漏らす。逃げられる可能性を考慮されるような状態であり、自身としてもまだ吹っ切れてない上にまだ自由にありたいという気持ちがアッシュにはあったために。
「無論、まだ今はそうはしたくはないであろうことはそなたの姿から分かる。だが敢えてそれでも言わせてもらうが、今のそなたは控え目に言ってもキムラスカに戻ることに乗り気ではないようにしか見えぬ・・・だからこそそういった気持ちがあるとしても、あえてここで戻ってほしい。もしローレライを見送る途中か後にでも心変わりを起こし、やはりキムラスカに戻らないといった結論と共にどこかに去るような展開になるのはこちらは望んではおらんからな」
「・・・俺は、そんなことは・・・」
「ア、ルーク・・・」
インゴベルトはそんな気持ちがあるだろうからこそこう言い出した上で真剣にそうするようにしてほしいと願い、アッシュが逃げ出さないとは言い切れない様子にナタリアが悲し気な面持ちを浮かべる。
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