鬼の居ぬ間に

「・・・俺から言えることはとりあえずここまでといった所だ。もしローレライが音譜帯に行くにあたり、何らかをこちらにやってほしいということがあれば聞くが・・・」
「特にはこちらからはと言いたいのですが、あえて申し上げさせていただくならばローレライが音譜帯に向かった際にはピオニー陛下にはローレライが音譜帯に向かったからだと報告をされてください。ローレライが音譜帯に向かったなら音譜帯には目に見えた変化は起こるのは確かでしょうから、下手に知らぬ存ぜぬを貫くよりはキムラスカにダアトの首脳陣の方々が事実を知っての上のことと認識された方が人々の混乱も少ないでしょうからね」
「それは構わんが・・・ローレライが音譜帯に行くのはキムラスカとダアトを回った後すぐなのかどうかもそうだが、どこで向かうことにするつもりでいるんだ?」
『・・・それは我にダアトの地から音譜帯に行くのかどうか、それを聞きたいということか?』
「・・・そうだ」
ピオニーはそんなティアに視線を向けることなくヒューバートに要求についてを聞くが、その後にローレライに問いを向けるとその意を察したといった様子の返答に真剣に頷く。
「現時点でローレライがこうして解放され、実在していると知っているのは精々お前達に俺も含めた各首脳陣と言ったわずか程度の人員しかいないだろう。その中で我々が事情についてを説明するのは当然のことではあると思うが、その事情に信憑性を付け加えるにはやはりお前が音譜帯に向かう姿をある程度の数の人々が目撃することが必要だろう。ただ音譜帯に新たな変化が現れたというだけでは、ローレライじゃなく何らかの要因があったからのことだと言いかねん者も出てくるだろうからな」
『だがそこでダアトに関しては先程言ったような過激な預言保守派の感情がどう転ぶか読めぬ所が不安、と言いたいのだな?』
「そうなるが、同時にダアトで行う効果というものも期待出来るからこそでもある・・・今まで預言を詠む為の体制に規則など様々な方針を決めてきたローレライ教団だが、もうプラネットストームも止まり第七音素の恩恵も無くなった今となってはそれらの考えを改めていってもらわねば預言に引きずられて妙な事を起こす輩も現れかねん。そうなるのを避けるというか効果的なのはローレライがダアトに現れ、直に預言の是非についてを語ることが効果的だと思うが・・・」
『いいだろう、引き受ける』
「・・・随分あっさり引き受けてくれるもんだな。危険な事が起きる可能性もあるって流れから察しただろうに」
ピオニーはその真意について話をしていくのだが、ローレライがあっさりとダアトで音譜帯に昇ると引き受けたことに逆に意外そうに漏らす。
『危険は承知の上でのことだ。それにプラネットストームの譜陣の時こそは不覚の事態ではあったが、それでも平時の状態であれば我を捕らえるようなことはそうそう出来ることではない。それにいざとなればヒューバート達にも話をしたが、即座に音譜帯へと逃げるようにはする・・・故に我の安全については気にする必要はない』
「そうか・・・そこまで言ってくれるのなら後は頼むが、そうとなれば次に向かうのはキムラスカになるか?」
「そうなりますね」
ローレライは平気だと考える根拠についてを語り、ピオニーが納得と共に次の行き先についてを聞くとヒューバートが肯定と頷く。



(まずい・・・まずいわ・・・今の流れでローレライがダアトで音譜帯に昇るって決まった上に、それを反対する理由もどう取り繕えばいいかもわからない・・・本当にどうすればいいの、私は・・・!?)
その一方でスルスルと決まっていく話の流れにティアは最大の焦りを感じ出していた、まず自分の思うような展開にするにはどうあがいても無理があるこの状況の進み方に。









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