鬼の居ぬ間に

「・・・ですがルミナシアに行ったとは言わなくても、ルークとはもう会えないと知ったなら・・・ティアはどうするんでしょうか・・・もしローレライの力を手に入れたとしたなら過去に戻るという可能性があるとは聞きましたけど、もしかしたらルミナシアの方に来ようと考えるんじゃないですか・・・?」
「ん~・・・どっちかっつったらその方が有り得そうな気がすんな。今までどういった旅をしたかってのをクレス達から聞くしかないからハッキリそうなるなんて言えねぇけど、ティアが求めてるのは利口なルークであって何も知らねぇ頃のわがままお坊ちゃんだって評価の頃のルークじゃねぇ。そう考えりゃ価値観に態度を変えさせようと躍起になるよっか、あのルークをどうにか捕まえて自分の手元に置く方が楽・・・みたいに思ってもあのティアなら不思議じゃないと思うぜ、俺は」
「「「「・・・っ!」」」」
だがエステルがそんな空気の中で不安混じりの疑問を口にしたことにスパーダが起きうる事の可能性を挙げると、一同は思い思いに苦い顔を浮かべる。ティアの行動が身勝手であることもあるだろうが、それ以上にそこまでしかねないのだと予想出来る執念を感じさせることに。
「ま、もうそんなことを心配する必要はねぇよ。そうならないためにローレライが対策を取ってるって話だし、適当な嘘をついてりゃどうにでも騙すのは簡単だろうしよ」
「・・・そうね。ティアは信用ならない物は疑り深いと言ったように振る舞いはするけれど、その実は信用出来ると思ったものに関しては無条件に受け入れ疑問に持つことはない・・・そういった習性があるからね」
不安に満ちそうな空気になるのを察してかスパーダがそうはならないと示す声にリフィルも同意し、一同はホッとしたようでいて微妙な空気を漂わせる。ティアの行動は要は自分判断で信用出来るかどうかが基準で、深い考えがないと言われてるも同然の物だった為に・・・









・・・そのような形でティアの行動に対する話がされている中、その当人は現在アドリビトムのメンバーと共にグランコクマにいた。



「・・・ふむ。まぁ話は分かったし、実際にローレライと会えたことで嘘ではないと認識出来た。それは別にこちらとしては構わんが、ヒューバートが言ったように過激な預言保守派の耳に入るような事はあまり望ましくはないだろう。特に現在ダアトもそうだろうがユリアシティはダアトとの道がまだ繋がっているならともかく、こうして外殻大地が魔界に降りた上にプラネットストームも停止した状態ではユリアロードとやらも使えるかどうかは保証など出来んだろう。そんな状態でローレライが現れたとなればその意思など二の次以下程度にユリアシティへの拘束に入る可能性は極めて高いだろう。プラネットストームの復活も含めて預言が詠める環境の復活に都合のいい預言を出すまで認めないという形でな」
「・・・っ!(ピオニー陛下までこんなことを言うだなんて、そんな・・・っ!)」
・・・それで謁見の間でアッシュの横に浮かぶローレライの姿を確認しつつあまり長居は得策ではないだろうと語るピオニーに、大本の発案者であるティアは何故楽観的にならないのかとばかりに心中で漏らす。まだローレライにはいてもらってもいいだろうとばかりに。
「・・・今まで散々世話になった身で言うのもあまり気持ちは良くはないが、もしユリアシティに行きそこの住民達に囲まれた時に逃げ出さないなら戦うことは必須になるだろう。だが逃げ出したとして外交をして向こうが話を受け入れるからもうこちらに来てもいい、大丈夫だと確信を持ってそちらに迎えるか?戦ったとしたなら大多数の住民を殺すことになるが、その後で平然とユリアシティに行けるか?・・・要はそういうことだ」
(っ!・・・これは、私に向けて言っている・・・!?・・・でも陛下の言う通り、戦ったとしても逃げたとしても・・・そんな状態の後で、平気でユリアシティに戻れるなんて気はしない・・・)
だがピオニーから続けられた言葉が遠回しに表現はしつつも明らかに自身に向けられた物だと感じたティアだが、その言葉に反論出来ずに心が重くなるのを感じずにはいられなかった。何だかんだありはしても流石に故郷の人と敵対もしくは殺しあうようなことなどしたくはないと感じた為に。









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