鬼の居ぬ間に

・・・それで空気こそ微妙な物にはなったが、一応はやることはやり終わった為に一同はダイクロフトへ戻ることになった。









(・・・あら?ルークがいない・・・?)
そしてダイクロフトに戻った一同の中でティアはその場にルークがいないことに疑問を抱く。普通待っているだけなら出迎えの体勢を取っているのは普通だろうといったように。
「・・・皆さん、お疲れ様でした。首尾はどうでしたか?」
「あぁ、問題ないよ。後は各地に報告に行って何もなければそれで終わるだろうからね」
「そうですか。では僕はその旨を他の皆さんにお話ししてきます」
「っ、ちょっと待って!」
「・・・なんですか?」
そんな時にジェイが場に来てクレスと会話を交わし、簡潔に話を聞き終わってさっさと立ち去ろうとする前にティアがたまらずジェイを呼び止めると、鬱陶しそうに振り返る。
「・・・ルークはどこにいるの?」
「ルークさんですか?彼にはゆっくりしてもらおうと、別の場所に行ってもらってます。ですので気にせず各地を回られてください。別にルークさんがいなくてももう特に問題もないでしょうしね」
「っ、何よその言い方は・・・!」
そんな様子だからこそティアは苛立ちながらもルークについて聞くが、ジェイがいないと言いつつトゲのある返しをしたことに更なる怒りを浮かべる。
「はいはい、怒っても時間の無駄よ。それよりさっさと報告に向かうわよ。こっちとしてもそうだけど、あんたももうやることは終わりなんだからさっさと終わらせたいでしょ?」
「っ・・・分かったわ・・・!」
そのままジェイに歩み寄り一触即発の空気になりそうな状態だったが、ルーティが間に入ったことで一先ずティアも何とか引き下がってジェイを睨むだけに留める。これが終わればもう関わりあいになることはない、それがティアにとって確かな救いの道筋であった為に。
「・・・じゃあ行きましょうか。あまり時間をかけたくないでしょうし、遅い時間に訪れても陛下達の迷惑になるでしょうし」
それでジュディスが気を取り直すとばかりに早く行くことを提案したことに、ティアも含めて一同は頷く。これ以上ルークの事も加え、時間を取るのは好ましくないという流れになった為に。






・・・そしてジュディス質が報告に向かうためにダイクロフトから降りた一行を見届けたジェイの元に、待機組が現れる。
「・・・お疲れさん、ジェイ」
「いえ、別に疲れてはいませんよ。ただあそこまで感情を剥き出しにして僕を睨み付けてくるとは思いませんでしたよ・・・折角本当の事を教えて差し上げただけなのに」
「あの言い方じゃティアが理解出来ないと思うわよ?・・・まぁ理解してくれない方がありがたいけれどね、こちらとしても」
その中からスパーダが気楽そうに声をかけてジェイが意味深に笑う様子に、リフィルも意味ありげに笑う・・・そう、ジェイは別に嘘を言ったわけではない。本当の事を言っただけなのだ・・・このダイクロフトの中は勿論、オールドラント全体のどこにもいないということを言っただけ・・・そしてその行き先がルミナシアであることを言ってないだけなのだ。この辺りはジェイならではの嫌らしさというか、抜け目ない判断と言えよう。









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