鬼の居ぬ間に

「と言うわけだ。後はそちらも早くマルクトとダアトに行った者達と合流したいであろうから、もうここを出てくれていいと言いたいが・・・その前に一つ言わせてもらうがアッシュ。こちらに戻ってくる際にはその神託の盾の服を着替えてから戻ってきてほしい・・・もうそなたは神託の盾の者ではない事もだが、シュザンヌはそなたら二人の関係を始めとしたことについてはほぼ何も聞かされておらぬ状態だ。そんな状態で『ルーク』として戻るそなたが『アッシュ』の服を着て戻るわけにもいかんだろう」
「それは・・・この屑の服を俺に着ろと言うんですか・・・?」
「服くらいは使えなくなったから別の服に着替えたといったように言えばいいことだろう・・・とにかく着替えてから戻ってくるか、見繕えるような服がなければわしかクリムゾンなりに言ってファブレに戻る前に着替えるように・・・よいな?」
「・・・はい、分かりました・・・」
それで話を終わらせるとする前にとインゴベルトは『アッシュ』としての痕跡を残したまま戻らないようにと言い渡し、アッシュは不満を押し殺すようにただ頭を下げるだけに留める。
(・・・アッシュからすれば『アッシュ』としての時間というか、そうやって過ごしてきた7年を事情があるって言ったって丸ごと無いことにされるってのは複雑じゃあっても、そうするのは嫌なんだろうな・・・勿論俺の服を使うことだったりその後釜に戻らないといけないってのがあるのもそうじゃあるだろうけど、その時間分生きてきたことを悪いこともいいことも含めて全否定されるようなもんだしな・・・俺が自分が『本物のルーク』だと思っていたことが、レプリカだってことで全否定されたように・・・)
ルークは内心でそんなアッシュに対しての考察と共に同情心を抱く。言葉にすれば間違いなく怒り狂う上に自分と全く同じとは思わないが、今こうしてインゴベルトから告げられた言葉は例え『ルーク』という存在に戻るために必要なことだとしても、『アッシュ』としての7年間を明るみに出さないように闇に葬る物だった為に・・・


















・・・そしてそんなルークの内心に表向きでも不機嫌だと分かるアッシュの状態に構わず、アドリビトムのメンバーと共にルークはバチカルを出てダイクロフトへと戻った。順番としては先にキムラスカ組が戻り、その後にマルクトにダアト組が戻ってくるようにとの手筈だった為に。



(・・・明らかに俺に視線が向けられてるな、ティアからすごく・・・これで何度目になるかは分からないけど、マジで勘弁してほしいんだよな・・・)
・・・それで一同集まった所で各々の組の代表者が経過について話し合う中、ルークは素知らぬ顔をしつつも確かな居心地の悪さを感じていた。視界の端から見えるティアが視線で自分を突き刺す程にじっくりと凝視していると分かっている為に。
(我慢だ、我慢・・・どうしてそんなに俺にこだわるのかって理由については未だに疑問は残るけれど、それでももう俺はもういなくなるんだからこの視線を気にしない方がいい・・・!)
しかしもうどうするかと決意の固まっているルークは視線について一切気付いたような素振りも不快感も見せることもなく、無視を決め込む。下手に反応しない方がいいと。









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