分かたれた道の再度の交錯

「・・・なぁ、今度は俺からいいか?」
「・・・何かしら?」
ジュディス達の空気が酷く重苦しく、誰も何も言う感じがしない。ルークはそう感じた上で自身から話をと切り出すと、普段のジュディスから考えられない程重い声が返ってくる。
「その・・・皆はローレライから俺の事を聞いてこっちに来たって言ったけど、ルミナシアの事はどうしたんだ?話を聞くと全員こっちに来たって事なんだとは思うけど、それだと皆ルミナシアでの生活から離れてきたって意味になるだろ・・・特にエステルとかウッドロウとかまで離れたらすごく混乱したり、問題になるんじゃないかって話にならなかったのか?」
少しそんな空気にルークは気まずげにしながらも、自身の気になったことを問い掛ける。



・・・アドリビトムの面々がここにいるということ、それはつまりルミナシアにはアドリビトムの面々がいないことになる。アドリビトムは最初こそは小さいギルドではあったがラザリスを倒した頃には世界を股にかけ、世界でも指折りの有名なギルドとなっていた。そんなギルドの面々が一気にいなくなると、言うことは各国でも話題になる・・・それもエステルやウッドロウみたいに国に深く関わる人間がいなくなればより一層話題になる。それもアドリビトムが国の重鎮をさらったのではといらぬ疑いをかけられる悪い話題も含まれる形になって・・・その懸念がルークの頭の中にあった。



「その問題に関しては問題はないわ。流石に全員が消えればまずいことになるからと半分程の人はルミナシアに残っているから」
「そうか・・・」
そんな懸念に対し半分は残ってるとのジュディスからの返答にルークは安堵しかけるが、表情をまた引き締めてジュディス達へと視線を向ける。
「・・・ってことは皆は目的が済んだらルミナシアに戻るんだよな?そしてその目的は俺に会って本音を聞くことだって話だけど・・・なら目的はもう達成したよな?」
「まさか、ルーク・・・私達に帰れって言いたいのかい?」
「うん、言葉は悪いけどな・・・でももうさ、帰ってほしいんだ・・・皆を騙してたのはずっと悪かったと思ってるし、謝れって言うならいくらでも謝る・・・けどローレライに言った通り俺はもうルミナシアにもライマにも戻らないし、戻れない。それにこうやってオールドラントに戻ってきてこれから起こることを知っている以上、尚更にさ・・・だからもう、帰ってほしいんだ。俺はいくらでも最低な奴って言われても構わないけど、これからやることだけは誰に何を言われたって止めるつもりはないから・・・頼む、もう帰ってくれ・・・」
「「「「・・・」」」」
そして暗に戻ってほしいと取れる中身の言葉をルークが言うとナナリーが少し怒気を含んだ声を向けるが、真剣に・・・それでいて自身の悪評に繋がって身を削ってでもと強いが、あまりにも悲壮に言葉を紡ぎ頭を下げたその姿にジュディス達からの返答はない。






「・・・一つ、聞いていいかしら?」
「・・・なんだ、ジュディス?」
・・・誰も何も言わないまま数分とも数時間とも感じる程の時間を重い沈黙と共に静止していたルーク達。そんな中でようやくジュディスから出てきた問いかけにルークも複雑な表情で頭を上げ、真剣な眼差しにその先を促す。
「・・・貴方はアッシュとナタリアの為にライマを出たと言ったけれど、誰かに頼ろうと思わなかったのかしら?いえ、それでなくとも貴方の本音を誰かに打ち明けようと思わなかったの?もし誰かにでも頼れば貴方ももう少し違った状況でライマに残れたり、もっといい状況になったと思うのだけれど・・・」
「・・・頼る、か・・・」
それで出てきた質問は他者を頼らなかった事についてなのだが、その言葉にルークの表情は今までで一番辛そうに暗く曇った。









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