決意と決別の意識の差

「・・・取りあえずはこれでいいかしら?」
「あぁ、うん。大丈夫、ありがとうジュディス・・・って言いたいんだけど、どうして髪の毛を袋に入れてるんだ?切ってる最中も思ってたんだけど・・・」
「あら。多少の部屋の散らかりならともかく、髪の毛がそこらじゅうに散乱してる部屋はどう思うかしら?それに貴方の髪の毛は何も切ってない状態のままというように見せるのに、髪の毛が散乱してるのは不自然だとは思わないかしら?」
「あ~・・・そういうことか」
「えぇ、そういうことよ」
・・・それで髪を切り終わり手持ち鏡で頭の様子を映していくジュディスに満足しつつ途中の袋で髪の毛を回収していた動作について聞くルークだが、理由を聞いて納得する。迷惑を避けると同時に不自然さを隠すためだと。
「でもこうして改めて見ると、本当に髪の毛が長いか短いかで印象が変わるわね」
「まぁそれは結構前のティア達にも言われたよ。本当に同じ人物なのかみたいにさ」
「じゃあもしアッシュも髪を切ったらルークと同じように変わるのかしら?」
「う~ん、あんまり想像出来ないな・・・アッシュが変わりたいってのもそうだし、そもそも髪の毛を切ることに理由が無いと嫌がりそうな感じが目に見えてるしさ」
「そうね・・・」
そこから髪の毛を撫でつつ話をアッシュの方に行かせるジュディスだが、ルークの苦笑気味な返答にふと手を止め・・・
「うわっ!・・・ど、どうしたんだよジュディス・・・!?」
・・・唐突に後ろから頭を抱え込むように腕に抱かれ、ルークはどうしたのかと驚きながら問う。一体どうしたのかと、強引さを感じさせない柔らかい感触を頭に感じながら。
「・・・ねぇ、ルーク。もしも貴方が貴方のままで、アッシュを始めとして私達からすればライマの誰とも関わらず平和にいたなら・・・貴方は幸せだったかしら?」
「え・・・どうしたんだよ、急に・・・?」
「・・・答えてくれないかしら?」
「・・・どう、だろうかな・・・そもそも俺がこうやって生きているっていうか、存在もそうだけどこんな風に考えることが出来てるのもアッシュや師匠達の存在があったからだしな・・・ルミナシアの方の俺の立場はともかくとしても、今のこのオールドラントの俺の立場とかを考えると想像は正直出来ないかな・・・」
「・・・そう・・・」
そんなジュディスがもしもの話についてを聞きたいと言うのだが、本音を余さず伝えるルークに何とも言いがたそうな声を上げる。想像が出来ないという答えに。
「・・・何となくジュディスの言いたいことは分かる気はするよ。アッシュ達と関係無く穏やかに過ごせたんじゃないかってさ。実際俺もそんなことを考えたことはあるし、何だったら俺がいない方がアッシュ達の為になったんじゃないかって考えたことも何度だってあった・・・それでも今の俺はさ、幸せだって思えるよ」
「幸せ?」
「辛いことはそれは数えきれないくらいにあったし、忘れたいこともいくつもある。それを忘れちゃいけないとも思ってる・・・けどその積み重ねがなかったら、今の俺がいなかったんだって考えるとその方が今となっては嫌なんだ。何も知らないままのわがままお坊ちゃんとして自分勝手に人に命令をして生きることは、あんなことを知るよりは幸せだとは思う・・・でも今の俺はそうやって何も知らなかった頃に戻りたくない。だから俺はこうやって知るべきを知れて、動ける時に動けて、ジュディス達のように頼れる仲間がいる・・・ティア達の事は残念だって思うけど、それでも今こうして仲間といれるってことは俺にとってすごく幸せなんだ」
「ルーク・・・」
そんなジュディスへとルークは自分は満ち足りているとその根拠を柔らかい笑みを浮かべながら話し、ジュディスはその答えに若干震えたように揺れる。









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