決意と決別の意識の差

「・・・何というか、短い髪の毛のルーク様は新鮮な気がします・・・ラジエイトゲートでローレライが肉体を保持してる状態ではその姿は見てはいましたが、それでも今こうして髪の毛が短いルーク様を見ているとよりそう感じました」
「あぁ、そうか・・・まぁなんつーか、別に髪の毛を切ることに抵抗感は無かったんだけどな。前にも決意を固めるためにって切ったけれど、元々俺自身が伸ばしたいって思って髪の毛を伸ばしてた訳じゃないんだし」
「あぁ・・・王族としての習慣から伸ばしていたと言うことですか」
「まぁな」
フレンはそこで短い髪のルークを新鮮だといったように漏らすが、別に長い髪にこだわりはなかったと平然に口にする様子に納得を浮かべる。



・・・髪の毛と言うのは一般的にはともかくとしても、宗教や国において少なからず役割を負っていることが多い。

その点で髪の毛を伸ばすことは王族としての見映えを良くすることもそうだが、文明に礼儀作法が浸透していない時代においてはいきなりの襲撃に備え、少しでも生き延びる可能性を高めるためにも首元を守るために伸ばすことが習慣だった時代があった。

無論そんな理由だけと言うわけではないが、そういった昔ながらの習慣を引き継ぎ、髪の毛を伸ばすことが義務と言うか当たり前にする所もある。それがキムラスカで、アッシュから『ルーク』として生きるようにとの流れを受け継がされたルークは別に自分から髪を伸ばしたいからと伸ばしていた訳ではないのだ。



「そんなわけだから別に髪の毛にそんなこだわりはねぇんだよ。一応パサついた髪の毛じゃ王族としてみっともないってことから色々ケアされてきたけど、今の俺からしたら髪の毛を切るのって一種の決意を固める時に切るものって感じになっちまったけどな。こんなこと言うと女っぽいとか言われそうだけどよ」
「いえ、私はそうは思いません・・・ただ少し考えてしまったのですが、そうして髪を切って意志を固めるというのであればまたルーク様は髪を切られるのですか?オールドラントからルミナシアに戻るにあたり・・・」
「あ~・・・流石にそれはしないよ。1回目のユリアシティでティアの前で切った時は自分の意思表示を強くするために切りはしたけど、2回目のルミナシアで切った時は意思表示の為に加えて俺が2度とルミナシアの表舞台に帰ってこなくなることを示すために髪の毛を添え付けたんだ・・・髪を切るってことで意思表示するとは言ったけど、それは昔ならともかく今の俺にはもう必要はない。気持ちは固まっていて、そうすることに迷いはないからさ」
「そうですか・・・では私もこれ以上はお聞きはしません。ルーク様のお気持ちがそのような形で固まっているというのであれば、私が何かを言ったり手伝うような事も無いでしょうから」
そんな髪の毛についての話から決意の固めかたに話が進むのだが、ルークはもう髪を切る必要はないと穏やかでいて確かな気持ちを抱く形で話す様子にフレンもそれ以上は意味がないと頷いて返す。
「・・・あ」
「どうなされましたか、ルーク様?」
「よく考えたら髪の毛を切ったのはいいんだけど、ちゃんと整えてなかったから変な風な髪型なんだよなこのカツラっぽいの外すと・・・何かそれを思い出すとムズムズしてきたんだけど、フレンは髪切れるか?」
「髪、ですか?・・・いえ、正直そういったことに関しては自信がないので、他の方に任せた方がいいかと思いますが・・・」
「あ~、なら仕方ないか」
そこでふとルークが声を上げて髪を切れないかと頼むのだが、フレンが何とも言いがたそうに断る様子に髪の毛を触りながら本心から気にしてないといったように笑みを浮かべる。









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