合間の一時はいかに

「そしてマルクトに残ることに関してだけれど・・・これはアニスが再びスパイを行うことを強制させられるような事態を避けるためよ」
「えっ・・・もうモースはいないんだし、それは無いんじゃないのか・・・?」
続けてリフィルがマルクトに残る理由については再びスパイにさせられることを避けるためと言うが、ルークは何故と首を傾げる。
「確かにモースはいなくなったし、借金をさせていた人物達に関しては私達が対処はしたわ。けれどここで問題なのは二つ・・・まず1つはさっきも言ったように今の状況じゃアニスの両親の考え方を根本から改善出来ないから結局また借金しかねないことと、もう1つはモースのやり方を知っていてその上で模倣する人物が後に出てきかねない可能性があるからよ」
「っ!・・・先に言ったこともそうだけど、後に言ったことって本当に起こりうる事なのか・・・?」
「可能性は低いことは確かではあるとは思うわ。だけれど前と違う状況であることを考えれば、全くない事ではないと楽観視はしない方がいいでしょう。特にモースが捕まっていたり、第七音素で暴走するような未来がもうないことを考えるとね」
「あ・・・そう言えばそうだったか・・・モースはその、暗殺されてしまったからそれまで通りじゃなくても近いくらいには信頼は残ってるんだな・・・」
リフィルは理由についてを詳しく言うのだが、モースについてを聞かされてルークもハッとする・・・以前であればモースは起こしてきた行動が日の目に晒されたことで預言保守派の人物達からも助けられることなくディスト達からの助けを受けてようやく行動出来るようになったが、今回は死んでいる代わりに預言保守派の人物達からの信頼はそこまで損なわれてないだろうと。
「この事に関しては以前にどこまでモースがアニスの事を自分の側近だとか近しい人に言っていたかは把握してないから、貴方も知らないことでしょう?」
「まぁそれはな・・・」
「それにその人物が仮にいたとしても特定するのもそうだけれど、口封じだったり暗殺のような手段を取ることは難しいと判断したのよ。特定するなら相応に長い時間がかかることもそうだけれど、特定しても口封じが出来るかもそうだし・・・何より、暗殺は流石にどうかという話になったのよ。人道的にというのもそうだけれど、下手に大詠師の側近が死んだとなればモースのことも含めて預言改革派の刺客がやったことだとか、そういった話になってダアトが混乱しかねない可能性があるってね」
「あぁ・・・色々理由が重なってってことか・・・」
更に話を続けるリフィルが可能性がない訳じゃないと言いつつそうであったとしても手出しが出来なかった理由を言い、またルークも納得する。下手な事はしない方がよかったのだと。
「そう。それで話を戻すとスパイを再びさせられる可能性はまだともかくとしても、両親の借金に関してはまず止めることは無理だろうという話になったの。これに関してはそれこそ強烈なきっかけが必要な為にね・・・そしてそこで問い掛けたの。全部が終わったらダアトの両親の元に戻るか、それとも今の縁を元にマルクトに残るかを」
「・・・それでアニスはマルクトに残ることを選んだっていうのか?」
「・・・色々言ったことは否めないわ。けれど何も覚悟せず、それでいてまた利用される可能性についてを言うとアニスも苦渋の決断をしたのよ」
「・・・スパイをさせられる事とかも考えてってこと、なのかな・・・」
そしてそれらの上で話をしてアニスが選択したのだと話すリフィルに、ルークも何とも言い難い複雑な表情を浮かべる。アニスの立場を考えると、決してすんなり出したような結論ではないだろうとの考えに至り。









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