合間の一時はいかに

「つまりそういうことよ・・・アニスの両親の考え方を変えるほどの事件は起こしようがないし、起こさない方がいいと私達の中でも話になった。そして言葉による説得がどれだけ効果が低いかもそうだけれど、もしその説得についてを世間話くらいの気軽さで誰かに漏らした上で二人の監視をしている人物達の耳に入ったなら・・・そう考えると下手にダアトに残すよりは有無を言わさずに連れていくのがむしろ安全だと思ったから、こうしたのよ。アニスがスパイをするのを止めることも含めてね」
「・・・分かった。確かにアニスの両親を連れてきて、アニスのスパイ行為を止めるためだって事は・・・ただまだ聞きたい事は残ってるんだが、まず全部が終わったら両親は元に戻すかもそうだけど事情は説明するのか?借金の事とかもそうだけど、アニスがスパイをしていたこともだけれどマルクトに残るっていうことも・・・」
それでリフィルが今までの流れを統括するよう両親を連れてきた理由を述べると、それ自体に納得はしつつもまだ聞かなければならないとルークは様々な話をする気があるのかと問う。
「・・・その件についてはまとめてアニスと話し合った上で決めたことだけれど、両親にはスパイの事実を知らせないようにした上でマルクトに残ることにしたとだけ言うことにしているわ」
「っ、それは何でだ・・・?」
「まずスパイの事実を知ったなら両親が取るだろう行動は場がどういうものかを考えずにイオンの元に直行し、娘がすみませんでしたといったように謝るのが目に見えていたからよ・・・多分どころかまず間違いなく両親はスパイをしていたことを軽く、それでいて大したことしていないだろうといった程度にしか事実を捉えようとはしないでしょう。いえ、それどころかモース様がイオン様の事を考えて独断で動いたことだからスパイなんて大げさな物じゃなくて体調だとかどんな風に生活していたのか、それを密かに教える役割をしていたんだ・・・と、アニスが位置を発信したからタルタロスが襲われただろう事を言いでもしない限り、両親はいい方にいい方にと解釈する可能性は相当に高いでしょう」
「!!」
リフィルはその中でスパイのことは言わないと言った上で言ったらどうなるかをシミュレーションした中身に、ルークは衝撃を受けながらも否定が出来なかった・・・底抜けに人がよくて悪いことに関して疑うどころかそういった事が頭によぎることすらなく、むしろ大詠師という雲の上の存在でいるモースならこうするんじゃないかというプラスしかない考えを抱く可能性は十二分に有り得る・・・ルークも前の経験からそう感じたが為に。
「そういった事を踏まえればダアトは少なからず騒ぎになるのは避けられないでしょう。まず預言保守派と改革派のいがみ合いが始まり、モースの人柄だとか取ってきた行動に、実際はどんな人物であったかに、こういった事ばかりをしてきたから殺されたんじゃないか・・・そういったような事になる形でね」
「・・・そこにタルタロスの事とかが加わったら、より酷い事態になることは必至になるんだろうな。そして両親はそういった事になったら、とても大丈夫なようになるとは思えない・・・」
「えぇ、こんなことになるとは思っていなかったと言った言葉と心境以外にないでしょうね。でもそうなることを一から説明しても危険度までは理解してくれないでしょうから、いっそスパイの事は言わない方がいい・・・そうなったの」
「そう言うことだったのか・・・」
そんな両親を手放しで信用どころか、迂闊に事実を話すことすら望ましいことではない・・・だからこそのスパイの事実の隠匿だと述べるリフィルに、ルークも重く納得した。アニスの両親が大丈夫だと言い切れない言葉達を前にして。









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