繋ぎ止めるべきモノ、断ち切るべきモノ

「繰り返し言いますが、俺はもうこの旅が終わったらキムラスカに戻るつもりもアッシュ達と再び会うようなつもりは俺には一切ありません・・・ですから俺の事はどんな言い方をしてくれて構いません。だから二人をどんな形ででもキムラスカに居させるようにしてください。これはもう俺には出来ません。叔父上達でなければ無理です」
「・・・わしらでなければなのか?」
「ナタリアはともかく、アッシュは身近でいて上の立場にいる人以外の言葉は命令形でもそうですが、下手をすると下から頼み込んでも素直に聞いてくれるとはとても思えません。そしてアッシュ程ではないとは言え、ナタリアも方向性が違うだけでそういった面があることは叔父上も否定が出来ないと思いますけど・・・」
「うぅむ・・・それは確かにそうだな・・・下からの声は民からならともかくとしても、ある程度近い位置にいる貴族なりなんなりではあまり嘆願も意味を成さぬであろうしな・・・」
ルークはそこから自分より二人の為に動く事に加えて他の誰でもなくインゴベルト達が行動することの大事さを話し、ナタリアの事でインゴベルトは表情を苦くする。生半可な立ち位置の人間では、ナタリアに心からの声を届けることが難しいという事を感じて。
「そう考えればもう叔父上達がどうにかするのが一番手っ取り早い上にまだ他の人物に頼るよりも確実です。むしろ叔父上達がいる内にアッシュ達が連れ合うことにキムラスカにいることを、俺にこだわることより優先させなければ後になるほど問題になります」
「それは確かに後になればなるほど厄介なのは分かるが・・・そなたの言い方はどこか、実感がこもってるように思えたのだが気のせいか?」
「っ、実感・・・と言うよりはこれから先の事に対しての危惧です。アッシュ達も考えはしない訳じゃないと思いますが、叔父上達が健在の内にでなければあの二人に意見を申し上げる事の出来る立場の人間がいるかと思うと・・・」
「そういうことか・・・確かにわしらがいなくなるとなればあの二人が王と女王になるため、意見を言える者はそうそういなくなるだろうし言われてもそれを聞くかどうかが怪しくなるからな・・・」
「はい・・・(危ない・・・ちょっとルミナシアにいた時に考えてたことが出てしまったか・・・注意しないと・・・)」
更にその重要性を語るルークだが途中で挟まれたインゴベルトの疑問に、内心ヒヤヒヤしながらもとっさに返した言葉に納得してくれた事にホッとする。追求が来なかったこともだが、気の緩みをリカバー出来た事に。
「・・・とにかく、俺がどんなにボロクソに言われようとも構いません。ですから父上も含めて二人をキムラスカに留めるよう、そして出来ることなら俺がそう言っていたとなんて言うことなく二人が幸せになれるようにしてあげてください。お願いします」
「・・・分かった、そうしよう。すまなかったな、もう行ってもよいぞ」
「はい、では失礼します」
それで最後とばかりに切に願うようにと頭を下げるルークにインゴベルトは悲し気な顔を浮かべつつ了承を返した後、退出するように言った後にもう一度頭を下げて部屋を後にするその姿を見送る。何かを言いたげでいて、哀れむような表情で・・・









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