分かたれた道の再度の交錯
「・・・よし、これでいいな。鍛練を開始しよう」
・・・適度に国境から離れた平原部。そこで集めた木の枝などを焚き火として起こしたルークは笑みを浮かべ剣を抜いて振り始める。
・・・さて。ルークが寝所を抜けて剣を振っている理由は何かと言えば、人前で思い切り力が振るえられないための鬱憤ばらしを兼ねている為だ。
今のルークは一番最初に旅を始めた時のレベルの時に合わせたくらいのものとして剣を振るっている。ただ今のルークは初めの頃とは比べ物にならない程に高い実力を有しているのだが、それを敢えて前のようにと抑えている。人に見られないようにとジュディス達にもそう見せる形で。
ルーク自身は自分が弱いという擬態を取ることに今は抵抗もないし不自然さを見せることもないのだが、やはり自分を抑え続けると言うのは多少なりにも気持ちが晴れないのも事実・・・そう思うが故にルークは久しぶりに思うがまま剣を振ろうと一人になったのだ。
・・・そんな一人抜け出した状態で黙々と剣を振るっていくルークだが、その心中は自由になれたはずなのにあまり晴れた気がしなかった。その訳とは・・・
(・・・誰かの視線を感じるな。ずっとさっきから・・・)
・・・そう、誰もいない場なのに誰かの視線を感じているからだ。
一応夜で外ということで周りを警戒しながら剣を振っていた訳だが、そんな自分に視線を向けてくる者がいる。とはいっても魔物のような自分を襲うための物ではないし(そもそも魔物ならすぐに襲い掛かってくるか、滅多にないが逃げ出すかの二つで息を殺して見てくるなどまずない)、かといって人であったとしても何かしてくるような気配もない・・・故にルークは気持ち悪さを覚えると共に、手加減しないと決めていたはずが念のためにと手を抜くことにしたのだ。
(どうしよう・・・なんかこのまま続けたって何か状況が好転するとも思えないし、やめようかな・・・そろそろ・・・)
「・・・ふぅ」
向けられる視線は未だ離れることはない。その事にルークは鍛練に見切りをつけ、剣を振るのをやめて焚き火の方へ一息つきながら向かう。
(・・・ん?気配がこっちに・・・)
「・・・精が出るわね」
「おわっ!?・・・な、なんだよ・・・驚かせんなっつーの・・・(ジュディスだったのか、あの気配は・・・)」
そしてすぐに気配が近付いてきた事に気付き、後ろからジュディスが声をかけてきたことに驚き文句を言うが内心はそう大して動揺していなかった。
「ふふ、ごめんなさい」
「ったく・・・つーか何の用だよ、んなとこに来て・・・」
「ちょっと目が覚めた時に貴方の姿がなかったから探しに来たのだけれど、まさかこんな風に稽古をしているとは思わなかったわ」
「・・・あ~・・・単に目が覚めてやることがなかっただけだっつーの・・・それにもう終わるからさっさと戻れよ。探しに来たっつーんならもういいだろ」
「・・・ふふ」
「ん・・・な、なんだよ・・・?」
気を悪くした様子もなく微笑を浮かべるジュディスに悪態をつきながら追い払うように手をヒラヒラさせるルークだが、新たに向けられた得体の知れない圧が加わった微笑にたまらず動揺する。
「いえ、一人で稽古をするのと二人で稽古をするのとでは効率が違うと思うのだけれど・・・どうかしら?私と手合わせしてみない?」
「俺が、お前と?」
「えぇ、そうだけれど」
「・・・別にそんなことやるつもりなんかねぇっつーの。それにもう稽古も終わったし、俺はとっとと戻るからな」
そんなジュディスから出てきたのは手合わせの申し出だが、ルークはやるつもりはないと背を向ける。
「そう・・・手合わせで済ませたかったのだけれど、残念ね」
「はっ?・・・一体何、を・・・っ!?」
だが普段のジュディスからは考えられない程に冷えた声が耳に届いた事に振り返ると、ルークは驚き目を疑った。既に槍を構え、戦闘体勢に入って気合い十分でそこにいるジュディスの姿に。
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・・・適度に国境から離れた平原部。そこで集めた木の枝などを焚き火として起こしたルークは笑みを浮かべ剣を抜いて振り始める。
・・・さて。ルークが寝所を抜けて剣を振っている理由は何かと言えば、人前で思い切り力が振るえられないための鬱憤ばらしを兼ねている為だ。
今のルークは一番最初に旅を始めた時のレベルの時に合わせたくらいのものとして剣を振るっている。ただ今のルークは初めの頃とは比べ物にならない程に高い実力を有しているのだが、それを敢えて前のようにと抑えている。人に見られないようにとジュディス達にもそう見せる形で。
ルーク自身は自分が弱いという擬態を取ることに今は抵抗もないし不自然さを見せることもないのだが、やはり自分を抑え続けると言うのは多少なりにも気持ちが晴れないのも事実・・・そう思うが故にルークは久しぶりに思うがまま剣を振ろうと一人になったのだ。
・・・そんな一人抜け出した状態で黙々と剣を振るっていくルークだが、その心中は自由になれたはずなのにあまり晴れた気がしなかった。その訳とは・・・
(・・・誰かの視線を感じるな。ずっとさっきから・・・)
・・・そう、誰もいない場なのに誰かの視線を感じているからだ。
一応夜で外ということで周りを警戒しながら剣を振っていた訳だが、そんな自分に視線を向けてくる者がいる。とはいっても魔物のような自分を襲うための物ではないし(そもそも魔物ならすぐに襲い掛かってくるか、滅多にないが逃げ出すかの二つで息を殺して見てくるなどまずない)、かといって人であったとしても何かしてくるような気配もない・・・故にルークは気持ち悪さを覚えると共に、手加減しないと決めていたはずが念のためにと手を抜くことにしたのだ。
(どうしよう・・・なんかこのまま続けたって何か状況が好転するとも思えないし、やめようかな・・・そろそろ・・・)
「・・・ふぅ」
向けられる視線は未だ離れることはない。その事にルークは鍛練に見切りをつけ、剣を振るのをやめて焚き火の方へ一息つきながら向かう。
(・・・ん?気配がこっちに・・・)
「・・・精が出るわね」
「おわっ!?・・・な、なんだよ・・・驚かせんなっつーの・・・(ジュディスだったのか、あの気配は・・・)」
そしてすぐに気配が近付いてきた事に気付き、後ろからジュディスが声をかけてきたことに驚き文句を言うが内心はそう大して動揺していなかった。
「ふふ、ごめんなさい」
「ったく・・・つーか何の用だよ、んなとこに来て・・・」
「ちょっと目が覚めた時に貴方の姿がなかったから探しに来たのだけれど、まさかこんな風に稽古をしているとは思わなかったわ」
「・・・あ~・・・単に目が覚めてやることがなかっただけだっつーの・・・それにもう終わるからさっさと戻れよ。探しに来たっつーんならもういいだろ」
「・・・ふふ」
「ん・・・な、なんだよ・・・?」
気を悪くした様子もなく微笑を浮かべるジュディスに悪態をつきながら追い払うように手をヒラヒラさせるルークだが、新たに向けられた得体の知れない圧が加わった微笑にたまらず動揺する。
「いえ、一人で稽古をするのと二人で稽古をするのとでは効率が違うと思うのだけれど・・・どうかしら?私と手合わせしてみない?」
「俺が、お前と?」
「えぇ、そうだけれど」
「・・・別にそんなことやるつもりなんかねぇっつーの。それにもう稽古も終わったし、俺はとっとと戻るからな」
そんなジュディスから出てきたのは手合わせの申し出だが、ルークはやるつもりはないと背を向ける。
「そう・・・手合わせで済ませたかったのだけれど、残念ね」
「はっ?・・・一体何、を・・・っ!?」
だが普段のジュディスからは考えられない程に冷えた声が耳に届いた事に振り返ると、ルークは驚き目を疑った。既に槍を構え、戦闘体勢に入って気合い十分でそこにいるジュディスの姿に。
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