繋ぎ止めるべきモノ、断ち切るべきモノ

「・・・おい、ティア。何を立ち止まっている?早く上に戻るぞ」
「っ!?ちょっ、ちょっとだけ待って!お願い、本当にちょっとだけだから・・・!」
「・・・何が目的かは知らんが、3分までだ。それ以上ごねるようなら無理矢理にでも連れて帰るぞ。必要以上にここにいればダイクロフトの装置が正常に作動しなくなる可能性も出て帰れなくなる事も有り得るのでな」
「っ!・・・分かったわ・・・(3分・・・お願い、その間に早く来てローレライ・・・!)」
ウィルがその様子に急ぐよう声をかけるが、諦めきれずにいる様子に仕方無いとばかりに制限時間を設けた事にティアは内心で必死に祈る。ローレライが3分内に来るようにと。



「・・・わざわざ待ってあげるなんて、どうしたの?ウィル」
「下手にさっさと帰れと言ってもごねるか黙るかで時間がかかると思ったから、何かするというなら制限時間を設ける方が却って時間を取らんだろうと判断したんだ・・・あの様子を見ればそれも納得出来ないか?」
「・・・あぁ、確かにそうね」
そんなティアから距離を取ってウィルに話し掛けるジュディスは、目線で示されたティアの状態を見て納得する。誰が見ているかなど気にすることもなく、何かを待ち望んでいるかのよう自分の掌を合わせ祈るような姿に。
(・・・何をしてるって言うか、何を望んでるんだティアは?前はここでローレライは現れたけど、今は地核にローレライはいないから何か起こることもない・・・そんな状況で何があるんだ・・・?)
ルークはルークでそんな姿に何故という気持ちを抱かずにはいられず、怪訝な視線をティアに向けながら考える。どういうことなのかと。



・・・ただ、そんな風に時間を取りはしたもののやはりローレライがティアに憑くようななく3分がすぐに経過した。
「・・・さて、もう3分経ったな。もうこれ以上は待たん、行くぞ」
「待って!もうちょっと、もうちょっとだけ・・・!」
「駄目だ。お前が何を待ち望んでいるのかは知らんが、これ以上は本当に安全に戻れるかどうかが怪しくなる。それでも待ちたいというなら俺達だけさっさとダイクロフトに戻り、装置も撤去する・・・お前を置き去りにしてだ」
「っ!?」
ウィルが頃合いと声をかけたことにティアはまだ諦めきれずに粘ろうと必死に声をかけるが、そうするなら置いていくと返され目を見開いた・・・ここに置かれると言うことはもう二度と地上に戻れないということと同義になるために。
「お前が何を求めているのかにしたいかは聞いてないから分からんが、その様子ではそれが達成出来るかどうかは見込めんだろうということは容易に想像がつく。そしてそんないつ来るか分からん物をいつまで戻れる保証があるかを保証してくれない状況で長く時間を使うわけにもいかん・・・それでもこれ以上残りたいと言うのであれば、お前だけでここに残れ。少なくとも俺はそんないつ来るか分からない瞬間の為に自分の命をかけてまでお前と共になどいたくはないし、そうやって戻れなくなった後でこんなつもりじゃなかったといった類いの言葉をお前から聞きながら死ぬのはごめんだ」
「そうね・・・貴女が死ぬのは勝手だけれど、私もそれに巻き込まれたくは無いわね」
「・・・っ!?」
「・・・それを踏まえて最後に聞くぞ、ティア。まだ何かを待ちたいというなら好きなだけ待てばいいが、もう俺達はそこから先は装置の再設置はしない。だが今俺達と戻るならお前の身の安全は保証される・・・さぁどうする?どちらを選ぶ、ティア?」
「っ!・・・・・・分かった、わ・・・私も一緒に、戻るわ・・・」
そしてとどめとばかりにジュディスも混ざって共に死ぬ気もその考えを優先する気もないと告げた上でどうするかの最後の選択を求めるウィルに、とうとうティアも観念して力なく頷くしかなかった。ローレライを諦めなければ自分の命自体が危ぶまれる状況に屈する形で。










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