前と違う結末への序曲

「ルミナシアのナタリアさんについては今言いましたが、こちらのナタリアさんに関してはアッシュさんがキムラスカに戻ると一言でも言葉にしていたならその心理に違いは出来たと思います。アッシュさんがいるならもう怖いものは何もないと言った様子で、ルークさんに対する気持ちを綺麗さっぱり捨てる事が出来たはず・・・現に前はアクゼリュスの崩落の後にユリアシティでルークさんからいとも容易くアッシュさんに気持ちを移したのに、そこで否定を返されたことがナタリアさんを不安にさせた。これはルークさんが次第に変わっていったからという部分もあるとは思いますが、そこで立場がどうなっても・・・誰にどう思われようとしてもアッシュさんを想うと言うなら、極端な話として国を出て王女の地位をかなぐり捨てる事も選択出来たのではないかと私は思います」
「あ~・・・まぁ分からない話でもないな。本当にアッシュ一筋で一途に愛を貫くってんなら、国を出るって選択肢もない訳じゃない。けど一度ヴァンを倒した後で行方が知れなくなったってのもあるが、そこで王女として国に戻ると選択したナタリアはアッシュの事を第一になんて選べなかったって事か」
「そこでアッシュがもしハッキリとナタリアに好意でも拒絶でも告げていたら、どうなるかは変わっていたんだろうけど・・・自分の立場とかしがらみも含めて、ルークに対して感じていた物を無視出来なかったから選択することよりも保険をかけた・・・そうアニーは感じている、と」
「クレスさんの言った通りです」
それでナタリアの状態についても併せて話をしていくアニーにユーリとクレスもその中身に納得したことに、真剣に頷く。
「ルークさんはキムラスカにアッシュさんを帰したいと思っています。自分の立場はどうあれと思う形でです・・・ですがもしそう決まった後でナタリアさんがルークさんに対して何か心残り、もっと言うなら何か恋愛的な意味で気持ちを惹かれてるような態度を取っていると取られかねない姿をアッシュさんに見られたとしたなら、アッシュさんはどう行動すると思いますか?」
「まず間違いなくルークに対して怒りを抱いて、色々決まったことを全部そっちのけでルークを責め立てて喧嘩を売ろうとするだろうな。そうなりゃ全部今までやってきたことがパァ、だろ」
「僕もそうなると思うけど・・・それはルークに対して、その時点での恋愛的な意味での未練なのかい?そうなったなら、もうナタリアには恋愛的な意味での保険をかける必要はないと思うけど・・・」
「確かにそこまで来ればナタリアさんの中にはルークさんへの恋愛的な心残りはないと思いますが、代わりに自分がルークさんを見捨てたという気持ちがナタリアさんの中に渦巻く事になるでしょう・・・それまで保険にとかけていた気持ちが一気に見捨てたという気持ちに積み重なる形でです」
「っ!・・・つまり、ナタリアからしたらより一層ルークを気にかける理由が増えてしまうということか・・・」
「はい。そのような事を避けるためにもナタリアさんの中にある気持ちに保険をどうにかしなければならない上に、ルークさんへの後悔が生まれたとしても決断もさせないといけない・・・そう思ったんです、これからの為にもと」
「成程な・・・そりゃ確かにやっとかなきゃ後々が面倒になりそうだ」
「うん、僕もそう思ったよ」
そして今までの話を全て統括するようにナタリアが持つ危険性及びその可能性を断ち切るための手段だと言ったアニーに、二人も納得した。そこまでしなければ確かにならないことだと。









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