前と違う結末への序曲

「・・・話はそろそろ終わりにしよう。ナタリア達の所も近くなってきた」
「おっ、あれか?」
「確かにアッシュさんが剣を振るっている所をナタリアさんが見守っていると言った形のようですね」
そうやって話していた時にクレスが発した声に、ユーリとアニーも気付く。前方に二人がいるという光景に。



「・・・よっ」
「あら、貴方達は・・・どうしたんですか、一体・・・?」
「ちょいとジェイド達と話をしてきたんだが、ベルケンドの技術者の協力があればより早く事が進むだろうってんでな。だからダイクロフト経由でベルケンドに行くってなって、ナタリア様にお出まししてもらって説得してもらおうって話になったんだよ」
「そういうことですか・・・」
・・・そしてナタリアの方に近寄って気楽に話し掛けるユーリが簡単に事情を説明すると、複雑そうに表情を歪める。
「・・・そういうことなら行ってこい、ナタリア。俺は一人でいい」
「ですが、アッシュ・・・」
「俺に無理に構う必要はない上、事態を早く進めるにはお前が必要とされている・・・行くんだ、ナタリア」
「・・・はい、分かりましたアッシュ・・・」
そこにアッシュが剣を振るのを止めて近付いてきてユーリ達に付いていくように言ってナタリアは渋々頷くのだが、どこか別れを惜しむようでいて悲劇的な何かに酔っているような・・・そんな空気が特にナタリアから滲んでいた。
「んじゃ行くが、すぐに戻ってくるから無理すんなよな」
「フン、テメェなんぞに心配されるいわれはねぇ・・・さっさと行きやがれ、目障りだ」
「はいはい、んじゃな」
ユーリはそんな二人の空気を見てあえて口を出すとアッシュは途端に不機嫌そうに変わり追い払うように返し、大して怒るでもなくクレス達と共にユーリは場を後にする。チラチラアッシュの方を見ては遅い足取りで付いていくナタリアなど気にしない形で。



・・・ただそれでもアッシュの姿が見えない位置にまで来たところでようやくナタリアはそちらを見ることを止め、三人の横に並ぶように歩く形になった。
「・・・どうしてそこまでアッシュに気をかけんだ?」
「えっ・・・?」
「大体話は聞いた、シェリダンに着いてからお前がアッシュの所にずっといたってことはな・・・だがなんでそうしてたのかなんてのは誰も聞いてないって話だからな。だから俺としちゃそうこだわる理由ってヤツを知りたいんだよ。今更と言えば今更だがな」
「・・・」
そこでユーリが覗きこむようナタリアにアッシュに対する考えへの問いを向けると、不安に満ちた表情を浮かべる。
「・・・あのアッシュの様子を見てると、何か不安になるんです・・・」
「不安?」
「正確には、ルークとヴァンの戦いを見てからでしょうか・・・アッシュは誰も見てない場所ではあのように苛烈に剣を振るようになりました・・・まるで何か、悪いものでも無理矢理振り払おうとしているかのように・・・」
「悪いもの、ねぇ・・・それがあんたに不安をもたらしてるとでも言いたいんだろうが、そのアッシュの行動がルークの姿からってのは分かってるよな?その言い方だと、そう言いたいのは避けたいみたいな気持ちもあるんだろうけどよ」
「っ・・・はい・・・だからこそアッシュのあの姿を見て、一人にしたくなかったのです・・・アッシュは何の為に剣を振るっているのか言葉にこそしませんが、ルークに対しての気持ちがあってと言うのは分かりますし、そんな彼を一人にしたらどうなるかと思うと不安で仕方無いから・・・」
「成程ねぇ・・・」
そんな表情のままいかなアッシュに対しての考えを抱いているのかを話しにくそうに語っていくナタリアに、ユーリに二人も納得と言った表情になる。ナタリアはナタリアでそう感じていたのだと知り。










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