順調、そして焦燥

「そういうことを言うなよ。俺達はお前の事は別に責める気もないし、ルミナシアに戻って来たいなら戻ってきていい・・・いや、むしろそうしてほしいって思ってる。それは多分ルミナシアにいる連中もニアタからの連絡を受けてそう思っているだろうよ」
「ルミナシアのって・・・そうか、ニアタなら通信は可能なのか・・・ルミナシアとも・・・」
「そうだ。あいつらも今の状況を話に聞いてはいるだろうし、俺達の案についても知ってはいる・・・ただ、流石にライマの奴らにはその事は言えはしないだろうし言わない方がいいと思うがな」
「それは・・・」
「もしルミナシアに戻ることを選択したとしても、今のライマに戻る場所はまずもうない・・・向こうのウッドロウ達からそういった情報も入ってきてる。もうお前は完全に行方不明から死亡扱いに変わったって形の情報がな」
「っ・・・そう、なのか・・・自分でやったこととは言っても、こんな形でそうなったって聞くと複雑な気持ちになるな・・・」
ユーリはそんなルークを励ますと言ったように後押しがあると言いつつも、ルミナシアとの繋がりとライマでのルークの扱いについてを告げると表情が複雑そうに歪む。望んだこととは言え、自分が死んだものと見られたと知ったことを。
「ま、その気持ちも分からない訳でもないが今の状況じゃむしろそっちの方がお前が自由に生きるって意味じゃ好都合だ。何せルークは死んだってなってるんだから、死んだ人間を探す意味なんて無くなるんだからな。だからそいつを利用すれば、ライマの奴らに気を付けさえすれば何とでも生きれる寸法って訳だ」
「だから・・・ルミナシアに戻った方がいいってことか・・・」
『そういうことになる・・・一応ダイクロフトにそなたが移り住むという選択肢も無いわけではないが、元々の目的とは違う上にもしアルビオールが完成してダイクロフトにまでティア達が直行するようなことがあれば目もあてられん事態になる。一応このダイクロフトはオリジナルの物をある程度再現した装備も持ってはいるが、それをアルビオールとそこに乗っている面々に向けてルークも使いたくはないだろう』
「っ・・・それは、使いたくないに決まってるよ・・・」
『そう。だが一度そのような形でダイクロフトに入らせるようなことになれば、もう終わりだ・・・いかに拒否を示そうとも物理的に撃退出来ない以上は何度でもダイクロフトに来れるようになった以上は向こうも何度でも来るようになるだろう。そして最終的にそなたがその熱意、いや執念に根負けするという状況になりかねん・・・あのティアがそなたを諦めるとはならず、そなたが拒否の意志を固めれば固める程そなたの心は磨耗していきそのしつこさから楽になるには首を縦に振るしかない・・・と言った状況にな』
「・・・っ!」
ユーリはそれを踏まえた上でそこが狙い目としつつローレライに自然と交代するが、ダイクロフトにいることについてはルークの心情を考えれば危険にしかならないと語っていく様子に当人も否定出来ずに顔を苦い物へと変える・・・ティアが諦めないなら自分が諦める以外に穏便に終わらせる方法はないと、そう感じた為に。
『もしダイクロフトに行かないにして、地上のどこかに隠れ住んだとしても同じような不安はどうしても拭いきれぬ事だろう・・・ただそれでもそなたがこちらに残ると言うのなら最早我らも止めることは出来ぬが、もしこのオールドラントに残る理由に未練が無いと言うならルミナシアに戻ることを選択してほしいと我は思っている。いや、むしろその方がこちらのティアに色々踏ん切りをつかせるためには良いとすら思える・・・流石にルミナシアに言ったなどとは言えずとも、ルークがこの世界からいなくなったと前と同じように報告すれば向こうも何が起きたのかと察することになるやもしれぬとな』
「・・・下手に俺がこっちにいると俺の安全がどうなるかってのもあるけど、ティアが何かしでかしかねないからならいっそ俺が死んだって認識にした方がいいんじゃないかって事か・・・」
そしてローレライが踏ん切りという言葉を用いてティアを諦めさせるように言うと、ルークもそれらを感じ取って苦く考え込む様子を見せる。虚飾など何もなく、今のティア相手ではルークが危険とルーク自身感じている事から。







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