順調、そして焦燥

『だからこそアドリビトムの者達には黙ってもらったのだ。確かに今のそなたなら演技をして他の者に黙っていてもらうことも可能だったではあろう・・・だがティアを始めとして他の誰かにその事を聞かれることもそうだが、そなたに出来るだけ苦心の時間がないようにしたくてな。この事をティア達に黙っていることについて、苦心する時間をな』
「あ・・・あぁ~、確かにこの事に関してはちょっと黙ってるの辛かったかも・・・特にアッシュにレプリカの体の事言われ続けてたら、我慢しなきゃならないって思わないといけなかっただろうし・・・」
『そう。そう考えた我はあえて何かあるとだけ匂わせるようにしてほしいと彼らに頼んではおいたのだが・・・事ここに来て、我からして新たな問題と思えることがある。それは例えこの体の事を無事に知らせずに進めることが出来たとしても、今のティア達相手ではそなたの立場が危ういのではないかという疑問だ』
「えっ・・・?」
ローレライが今までの沈黙についての理由を総括するよう話を進める中身にルークも納得するが、続いた苦い口調からの不安材料に戸惑う声を上げる。どういう事かと。
『・・・これはルークにではなくユーリ達に聞くが、もし全てが無事に終わり各自どうするかとなった時・・・そこでルークがどんな形でも無事平穏な暮らしをそこで得られると思うか?』
「有り得ねぇな。どうアッシュと決着をつけた所であいつの性格を考えりゃ、ルークに対してリベンジが成功するまでしつこく付きまとってくるのは想像がつく。そうなりゃ周りがどうだろうがアッシュは躍起になって行動して、良くない結果ってやつを引き起こすだろうな。それもルークにとってイメージが相当に悪くなるような結果をな」
「ユーリさんの言葉に私も同意します・・・多分その時にナタリアさんはルミナシアのナタリアさんと同様にどうやって止めればいいのか分からずに戸惑って、ジェイドさんにティアはその時にはマルクトにダアトとルミナシアと違って遠く離れた場所に戻っていることになるでしょう。そんな二人にルークさんの物理的な意味でフォローが出来るとは思えませんし、例え出来たとしてもそれがルークさんの側に立ったフォローになるとも思えません」
「私も、アニーさんと同じような意見です・・・特にティアさんの今の様子では、例えルークさんの苦境を伝え聞いたとしても下手をすればアッシュさんをどうにか出来ない貴方の方が悪い・・・そう言う可能性すら有り得ると思います」
「っ!・・・否定を返したいけど、返せないのがすげぇ辛いな・・・特に前ならともかく、今のティアの事を考えるとそんなこと言わないなんて言えないのがまた辛いよ・・・」
そこでローレライが本人にではなくユーリ達に問い掛けを向け各々が答えていくその中身に、ルークはたまらず表情を辛そうに歪める。自分の立場に気持ちを悪くしない、そうティア達に言える根拠をルークは持たないと感じたために。
『・・・我はルークも含めたティア達に救われた前の我ではない。故に我は前の我よりフラットな視点で物を見れていると自負しているが、それを抜きにして今のそなたとティア達との関係が前と違うことを加味したとしても・・・最早、以前のようにとまでとは言わずとも負の値から引き上げることすら出来ぬと我は見ている』
「っ!?・・・そこまで、言うのか・・・ローレライ・・・」
『あぁ、そうだ』
そしてローレライは自身の考えについてを正直に述べ上げるが、その迷いの無さにルークは愕然とした・・・そこまでティア達はルークと仲を取り繕う事が出来ないと、ローレライが感じていることに。











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