順調、そして焦燥

『本来であればその体から出たとなれば、大爆発と違いレプリカのその身は第七音素としてたちどころに霧散して大気に紛れるのが結果となる。だがアッシュの肉体を万全な物とする為にも、我はそなたの体をこの体に入れる時にはその音素をアッシュに戻そうと考えているが・・・そこで問題になるのがアッシュへの説明もそうだが、この体の説明に関してだ』
「・・・それってつまりいきなりアッシュの中に音素が入った理由もだけど、何で俺がレプリカの体じゃなくなったのかって事を説明するのかってことか?」
『そうだ・・・まだ前者に関しては我がフォミクリー技術によって抜き取られた身体情報をそなたに返したとでも言えば言い訳になるだろうが、そなたの体がレプリカでなくなったとしたならどういう事だとなるだろう。ただここでそなた自身がレプリカの体でなくなったことを悟らせねばいいのではないかという対策に関しては、あまり望ましい事ではない』
「どうしてなんだ?」
『アッシュに身体情報を戻す事自体は我の力ならば出来ない事ではないが、我はセフィロトを除いた場を動く訳にはいかない上にある程度そなたとアッシュの距離が我に近い位置になければそうすることが出来ぬからだ。そして距離が重要なのはそなたを体に戻すことに関してもでもある』
「あっ・・・つまり、アッシュもラジエイトゲートに来る必要があって、必然的に俺もまた近くにいなきゃならないから誤魔化す事が相当難しいって事なんだな?ローレライ」
『そういうことになる』
それでローレライが問題点として何があるのかについてを話していき、ルークもその問題点に納得する。体を移す際、様々な危険性があるのだと。
『おそらくアッシュをこのラジエイトゲートに連れてくること自体は然程問題ではないだろう。だがアッシュだけを連れてこれるかというのもある上、そなたの体を見られずに終わらせる事が出来るかという問題があるのだ。特にそなたが肉体から離れる時にこの肉体に移る時・・・これが最も大きな懸念となる。何せこの肉体についての説明をどうするかがややこしくなるのだからな』
「まぁ、確かにな・・・ルミナシアの事とか、皆の事とか、そっちでの俺の事とか・・・全部芋づる式に話さなきゃいけなくなりそうだと思うし・・・」
『そう、誤魔化そうにもこの肉体はレプリカではない。死霊使いに確かめられでもすれば確実にレプリカの体ではないと露見するのは間違いなく、同時にそなただけがここまで誰にも見られずに来て肉体の交換などまず無理だろう。精々我が二人の距離を離れさせた上で事を無事に進められる距離はここからパッセージリングの操作盤の間ほど・・・それだけの距離かと思うかもしれぬがそれだけの距離をアッシュ達、特にあのティアがそなたが一人でここまで来るのを放っておくと思うか?』
「っ・・・いや、正直そんなことは思えない・・・それこそローレライの言うように、あのティアが俺の事を見過ごすとはとても・・・」
その上でいかにその時の条件が厳しいのかを語るローレライだが、ティアの名前が出てきた途端にルークの顔色が一気に曇る。目下、最も問題となり得る行動を取りうるのがティアと今までから否定出来ないと感じた為に。
『・・・我としてもこのようなことは言いたくはなかった。だがそなたの様子を度々見ていたが、あのティアがこの体に我の事を知ればどのような暴挙に出るか予測がつかん・・・特に我の事が初めから自由であったと知られたなら、怒り狂うだろう。何故最初から姿を見せず、自分達にこういう事情があると説明しなかったのかと、協力が無かったことを責める形でだ』
「・・・そんなことになったら、今までの事全部が台無しになりかねない可能性も有り得るってことか・・・」
ローレライもまた苦い声でティアに対する危険性を口にし、ルークもまた一層辛さを感じながら危険と呟く。ティアの行動が今までの全てを台無しにしかねないと。












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