順調、そして焦燥

「ま、別に俺はお前を嫌ってる訳じゃねぇよ。まぁ前は前で貴族らしくないお坊っちゃんだと思ってそれなりに楽しかったが、今のお前もお前で悪くないって思ってるからな。むしろもうお前に対して貴族とか普通の立場にいるかとかそんなことは関係無ぇ。ただ協力したいからしてるんだよ・・・一人の人間として、な」
「そう、なのか・・・何か、ユーリにそこまで言われるってのも妙な気がするな・・・いつもいいようにあしらわれてばっかりだったし・・・」
「何言ってんだよ。それも全部自分から分かって突っ掛かって、あしらわれたフリをしてきたくせに」
「あ~・・・それ言われるとキツいな・・・」
そこから自信を覗かせた笑みを見せて返していくユーリに、ヘニャリと笑いながらルークは頭をかく。以前にはなかった、ユーリとの新しいやり取りに。
「・・・あっ、今更だけどちょっともうひとつ聞いていいか?気になったことがあるんだけど・・・」
「ん?なんだ?」
ただそこでふとルークが申し訳なさそうに伺いを立てた事に、ユーリは何かと問い返す。
「いつも突っかかってたら迷惑だろうと思ってユーリの方にだけ偏らないようにしないようにとしてたから絶対とは言えないんだけど、ユーリがアッシュと会話してる所って見たことないんだけど・・・ユーリはアッシュの事をどう思ってるんだ?」
「・・・アッシュ、ねぇ・・・」
ルークがそこから口にしたのはアッシュについての印象なのだが、ユーリは笑顔を引っ込め考え込むような素振りを見せる。
「・・・まぁなんつーか、正直俺も今思い出してもアッシュとあんまり何かを話したような記憶もないんだけどな。その辺りはアッシュとの巡り合わせもそうだが、あいつ自身がわざわざ俺と話すような気にもならなかったんだろ」
「あ~・・・まぁアッシュの性格を考えるとそうなるか・・・用も無いのに誰かに自分から話しかけるようなタイプじゃないしな・・・」
「・・・ま、印象に関しては強いて言うならウッドロウと別方向に真面目な奴って所だな。ウッドロウが真面目じゃないと言う訳じゃないが、あいつは真面目ななことを真面目にやってるみたいに見せるような事はしないで気さくに話し掛けたりしてくれる・・・けどアッシュは冗談とか世間話とかそんなウッドロウとは逆に全く言うような事もなく、むしろ仏頂面でずっと過ごしてたからな」
「う~ん・・・何て言うか否定出来ないな、それは・・・アッシュがウッドロウみたいに気さくに笑顔を浮かべて誰かに話しかけるなんて光景、今までの人生全部含めて俺も見たことないし・・・確かにそう思うのも納得出来るな・・・」
それでユーリはアッシュと話したこと自体がそうないとしつつウッドロウを引き合いに出して口にした答えに、ルークは首を傾げながらも納得する。悪いとも言い切れないが、かといってアッシュの評価が高いとは言い切れない答えに。
「ま、この辺りは他のメンバーに聞いても似たような答えが返ってくるだろ。と言うかアッシュがナタリアとまでは行かずとも仲が良かったなんて言うのは、ウッドロウにエステルとかくらいだと思うぜ?本人に聞いても仲が良かった奴がいると言うとも思えないしな」
「あぁ・・・まぁアッシュの性格だとそうなるか・・・そんなこと聞かれてもまず質問に答えてくれるはずないだろうし・・・」
「だろ?だからこの話はこれで終わりだ、答えも出た事だしな」
「・・・そうするか、気になったことも聞けたしな」
更にユーリが他に発展させても同じと言うと、ルークも今度は素直に頷く。もうその通りだとルーク自身も思った為に。








11/22ページ
スキ