順調、そして焦燥

「となればあまりそなたらをわしが引き止める訳にもいかぬか・・・では少し城の外で待っていてくれぬか?経緯を記した書簡をすぐに用意するから、その間そちらで待機してほしい」
「はっ、かしこまりました」
「では後は頼むぞ」
それで外で待つよう願うインゴベルトにヒューバートは快く応え、任せると言う気持ちのこもった声を受けてルーク達は謁見の間を後にしていく。



「・・・タルタロスが必要になるとは聞いていませんでしたが、そうなのですか?」
「黙っていたと言うよりはタルタロスなら研究書に書かれていた理論を実践するのに適しているのでは、という目論見からです。先程も言ったように技術がどれだけの物かについては我々は正確には把握していませんからね」
「・・・まぁいいでしょう。それで成功するならそれに越したことはありませんし、許可を出すのはピオニー陛下ですからね」
そして城を出た一同だがジェイドの探るような声にヒューバートは自分達の把握している事を正直に明かし、自分には関係は無いとばかりの言葉のニュアンスで返す。
「納得していただけたらよろしいですが、すみません導師・・・ダアトに戻ると言っていただいて」
「いえ・・・今の状況では僕が戻らねばいけないのは分かりますから構いません」
「ただ今の状況で導師を一人ダアトに向かわせるのは、まだモースのような輩が出てきかねん事もあるからあまり勧められる事ではない・・・陛下の前では二つに分かれるとは言ったが、念の為に導師にも何人かつけた方がいいだろう。もしもの場合に備えてな」
「そうですね、その方がよろしいでしょう・・・ですが私は次のグランコクマに向かう際に戻ると陛下にお伝えしていますから、導師にお付きする事は出来ませんが・・・」
ヒューバートはそこには突っ込まずイオンに礼を言うが、リオンの用心深い発案にフリングスも同意しつつ自分はイオンの護衛は無理だと返す。
「・・・となれば、この中でダアトに所属しているのはティアにアッシュの二人だが・・・妥当なのはこの二人のどちらかだけでも導師の護衛につくべきだろう。所属を違える面子ばかりが同行していてはどういうことだという目で導師が見られかねんからな」
「「・・・!」」
その上でリオンが具体的な名を上げた二人がピクリと反応するが、その表情はどちらもすぐさま快諾をするような色と見て取れるような物ではなかった。



(・・・その案自体は、まだ受け入れることは出来る・・・けれどその選択をしたら、私がルークといれる可能性はどうなるの・・・!?)
その一人であるティアの頭の中にある考えはイオンの護衛の重要度より、ルークといれるかどうかが重要だった。どうにか巻き返しを図りたい、そう思うからこそルークの方が重要なのだと。
「・・・貴様の言うことは分からんでもない。今更導師が襲われでもして今の状況がぶち壊れるなんざ、俺としても望んじゃいねぇからな・・・だが俺かヴァンの妹のどっちかだけならまだしも、俺はヴァンの妹となんざ組みたくねぇ。組ませるというなら俺は今からでも降りるぞ」
「なっ・・・!?」
「・・・まぁどちらかでも構わんとは思うが、それほど嫌だということか?」
「この屑程・・・いや、ある意味ではこいつの方がこの屑より厄介だ。そんな存在と何日も逃げ場のない所で顔を合わせて会話などしたくもない」
「ア、アッシュ・・・貴方・・・!」
そしてもう一人のアッシュだがハッキリとティアと組むのは嫌だとリオンにルーク以上に拒否をする姿勢を貫かんとする様子に、ティアはワナワナと震えだす。そこまで言われる理由は無いとばかりに。











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