戦場に際し開き、詰まる距離

「じゃあ貴方のそういった事への興味は婚約者であるナタリア殿下に向けられてるのかしら?」
「ナタリア?・・・へっ、あいつはただの婚約者ってだけだ。んな風な目で見るつもりはねーっての」
だがジュディスが続けて投げ掛けたナタリアはとの問いに、怒りを浮かべていたルークの感情に表情は一気に冷えてしまったよう普通に変わり有り得ないと首を振った。



・・・ルークはナタリアに対して劣情に愛という感情を持てない。それは演技かどうかは関係ない揺るぎない事実だった。いや、むしろ嘘をついてまでナタリアに対してそのような想いを抱いたと言うことすら忌避していると言ってもいい。そしてそこまでの想いをルークが抱く理由とは、ナタリア自身にもだがアッシュとの関係性にもあった。

前でのオールドラントの時にルミナシアでもそうだったが、ナタリアは共にルークにではなくアッシュへと想いを馳せていた。ただ前のオールドラントの時はルークに想いを向けていたのではないかと思われるが、これはルーク自身もよく分かっていた・・・それは自身にではなくあくまで自分の姿をアッシュに重ね、投影したものだと。

そしてその感情に拍車をかけるのがアッシュとナタリアの自分が入り込む事が出来ないと思えるような姿だ。ただオールドラントでの時だけならルークも別の考えを抱けただろうが、ルミナシアでナタリアとアッシュの世界を越えた結び付きを感じさせるような姿を見た事から、ナタリアに対する想いには劣情に愛という感情は抱けなくなってしまっていた。ナタリアが自分の婚約者なんだと言いながらも、アッシュと叶わぬ恋に身を焼いているその姿を見せつけられていく程に。

・・・故にルミナシアで全てを捨てて旅に出たのだ、ルークは。二人を結び付けさせる為にもだが、絶対に結婚など有り得ないと自身が感じていたこともあり。そしてそれはオールドラントに戻ってきた今となってもナタリアの本物の『ルーク』であるアッシュへの想いは変わることはない為、ルークはまた一層ナタリアへの想いは有り得ないと考え接してきたのだ。女性として見ず、数少ない幼なじみとして・・・



「・・・あ~あ、くだんねぇ事ばっか言ってたら疲れちまった。これ以上くだんねぇ事を言われんのも面倒だし見られたくねぇならあっち向いてっから、適当にしてろよ(流石にこれ以上体を見た見てないで弄られんのは避けたいしな・・・)」
「あ・・・」
ナタリアの話題で怒りも冷めた為にルークは妙な流れを打ち切るよう岩の方へ移動し、背を向けてドカリと地面に座り込む。アニーが何か言いたげに声を上げたが、ルークは振り返ることなく無言を貫く。
(はぁ・・・こんなタイプじゃねぇんだけどな、俺・・・さっきのナタリアの事も妙にテンションダウンしてしまったし、今の俺らしい感じじゃなくなってしまったけど・・・まぁこれは別にいっか、ジュディス達がナタリアの事を知るわけもないし適当に流せばいいしな・・・)
そこでルークは内心で疲れと共に失敗だと感じていたが、すぐに気を取り直す。この失敗は別に大したことではないと。



「「「「・・・」」」」
・・・だがジュディス達に背を向けるルークは知らなかった。彼女達が自分の後ろで意味深な視線を交わし頷きあっていたことを。















一つ一つ確実に詰まり、確実に開く距離



焔を取り巻く環境は大きく変化していく



その中で焔は知ることになる、自分への想いがいかなものかを



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