避けえぬモノと向き合い越える

「っ・・・まさか、このようなことになろうとはな・・・!」
「いい加減諦めやがれヴァン!もうテメェに勝ち目なんざねぇ!」
「確かに、このまま戦っても私の勝ち目は限り無く薄いだろうな・・・!」
そういった状況をヴァンも把握して戦いつつもまさかと漏らし、アッシュの強気な言葉にそうだろうと返す・・・ジェイド達やアドリビトムの面々が今は遠巻きに戦いに参戦はしてはいないものの、回復をしていながら油断なく見ている光景を確認した為に。
(確かに今のままならもし俺達が負けても、皆が待機してるから師匠が勝つ可能性は限り無く低い・・・ただ、師匠が勝ち目がないからなんて大人しく降参なんてことなんてあるはずがない・・・師匠はもう倒さないと止まらない領域にいるんだ・・・!)
ルークはそんなヴァンの態度に負けへの理解はありつつも、それでも止まらないと感じていた。状況が不利というだけで終わるはずがないと。
「・・・だが引けぬ!私を止めたいと言うなら、私を止めてみせろ!」
「言われるまでもねぇ!お前は俺が止める!」
(あ~、やっぱり・・・出来るならそんなにアッシュにはヒートアップしてほしくないんだけどな、熱くなると隙が生まれやすいし・・・)
そして案の定止めてみろと強く言うヴァンにアッシュも買い言葉とばかりに勢いを増して剣を振るい、ルークはどうしたものかと考える。
「フッ・・・甘いぞアッシュ!」
「っ!しまっ・・・!」
「くっ・・・!」
‘キィンッ!’
(あぶねぇ・・・もう少し遅かったらアッシュがヤバかったぞ・・・!)
次の瞬間大振りに振られた剣を自らの剣で滑らせるようにいなしたヴァンは体勢を崩したアッシュに剣を振り下ろしたが、間一髪ルークは本気の動きで剣を間に入れて受け止める。



(っ!?あの動き、本当にルークなの・・・!?)
そんなルークが内心冷や汗気味な中、その光景を見たティアは今までの動きとまた明らかに違う様子に驚きをまた浮かべる。
「・・・今までの動きと明らかに違うな、レプリカルーク。ここまでの戦いでは手を抜いていたのか?」
「俺はただ、必死に戦ってるだけです!」
「・・・フッ、どうだか・・・な!」
「くっ・・・!」
(兄さんのいなしで体勢を崩さず、持ちこたえた・・・!?)
ヴァンは剣と剣をぶつけあう体勢のまま余裕といった笑みでその動きについてを指摘し、ルークが肯定とも否定とも言い切れない返しをしたことに力を抜いていなそうとするが、アッシュと違い体勢を崩さなかったことに更に驚くティア。
「くっ・・・俺を無視してんじゃねぇテメェら!」
「・・・少し黙って見ていろ。このレプリカの後に改めて相手をしてやる」
「っ!テメェ、この屑を優先するってのか!」
「そうだ。お前よりこのレプリカの方が厄介なのは今の動きで分かった。お前を助けた動きでな」
「何だと・・・っ!」
「気に入らんだろうが事実だ。そしてお前と同じよう熱く行動していると思いきや、お前より冷静に物事を見ている・・・本当に私の知るレプリカかと疑う程にだ」
(兄さんがここまで言うなんて・・・やっぱりあのルークは何か変というか、変わってるのね・・・!)
そんな時に体勢を立て直したアッシュが食って掛かって来たことにヴァンは口で対応し、その中身にティアは一層確信する。やはりルークは以前と明確に違うのだと。



(・・・流石に今の動きで師匠には俺の事が不自然だってバレたか・・・まぁもうここまで来たら後は何とかなるか、ジェイド達もそこまで追求してこないだろうし)
そしてルークもルークで自身の事を少なからず知られたことを知るが、案外問題ないだろうと楽観視していた。自分達の人間関係からして、追求は然程ではないだろうと。









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