戦場に際し開き、詰まる距離

・・・そして一方、ティア達に場面は移る。



「・・・見えました!あそこがセントビナーです!」
「イオン様!もう少しですから耐えてください!」
「はい!」
・・・同じ時間帯であるというのにティア達は全力疾走でセントビナーにまで走っていた。
目の前に見えたセントビナーにジェイドが叫び、アニスはトクナガに掴まるイオンに必死に呼び掛ける。



・・・さて、何故ティア達がここまで必死に走っているのかと言えば神託の盾に追われているからだ。

昨夜は平野部で夜営をしていたのだが神託の盾の追手が来たことにより警戒しながらとは言え休むこともままならなくなり、夜を徹してセントビナーに向かわざるを得なくなった。一つの場に留まることは出来ないと一同は判断して。

それで夜も明ける頃には大分セントビナーに近付いたのだが、神託の盾の追手は執拗にティア達を追い掛けてきた。その神託の盾はクレス達が撃退するに至ったが、数が多かった為に時間がかかりようやく今の時間にセントビナーに来れたと言うわけだ。



(こんなことになるなんて・・・神託の盾がセントビナーにいるような姿は見えないけれど、これじゃあセントビナーに行っても神託の盾が周囲を囲んだら一歩も出られなくなるじゃない・・・それにルークがセントビナーに来ている保証もないし、後で来るとも限らないし・・・本当になんなのよ、今の状況は・・・!)
その中でティアは隠しもせず歯をギリリと噛み締め、文句を心の中で盛大に叫んでいた。特にルークと合流が出来ないだろう状況に対して特に。















・・・そうやって神託の盾の襲撃から逃げたティア達はセントビナーへと滑り込んで入った。一同がセントビナーに入って一時間もしない内に神託の盾が周りを囲む形で。その光景に少し落ち着いて遠巻きに見ていた一同はホッとしていたが、ティアの内心は更に荒れることになった。

何故かと言えば駆け込んだマルクト軍の駐屯地でルークがいないことを知ったこと。そして時間が経ってからセントビナーに来たラピード(ちなみにラピードは神託の盾からあまり顔を知られていないであろうことから入口付近で待っていたユーリがラピードを受け入れたことから無事に合流出来た)からの手紙でカイツールに直接向かったと知ったからだ。



「・・・っ・・・!」
「・・・酷いですね、あれは・・・」
「えぇ・・・正直僕もどう言っていいか分からないです・・・」
・・・一応の安全の為、軍の駐屯地の中に匿ってもらっているティア達。だが一人離れた場であからさまにイライラしてるといった表情を隠しもせずコツコツと足を鳴らすティアに、アニスもイオンもコソコソ話しをしながら気まずげな顔を浮かべていた。
「・・・導師。すみませんがあの娘に気晴らしに外に出るように言ってはいただけないでしょうか?このままの状態が続くのは流石に我々としても歓迎出来る物ではありません」
「・・・それは構いませんが、貴方は言わないんですか?」
「生憎こちらは初めからあの娘によく思われていません。それもギルドのメンバー全てに当てはまること・・・おそらく私だけでなく他のメンバーが気分転換に行けと行った所で素直に言うことは聞かないでしょうし、先に私が言えば例え導師が言ったとしても聞き入れるかどうかも怪しくなるかと私は感じています」
「っ・・・だから僕が言った方がいいというんですね・・・分かりました、少し行ってきます」
そこにユージーンが内密に話に加わるようにコソコソと会話に入り、イオンはその話に自分がやるしかないと理解し覚悟してティアの方に向かう。











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