なだらかでも綺麗でもない道

「公爵、以前ベルケンドに向かった際に我々は謡将にお会いしましたが・・・現在謡将達はベルケンドにおられると思いますか?」
「・・・おそらくそれはないと私は見ている。そちらがベルケンドにナタリア殿下達がまだ生きていてルーク達が会いに来たとは連絡は受けたが、そのすぐ後にヴァン達はベルケンドを出たと私は連絡を受けた。理由は何なのかは分からぬが、そちらの行動に何かを感じて対策を取るためだとしたらベルケンドに戻る理由は無いだろうからな」
「成程、もうベルケンドにはいないということですか」
そんな公爵にベルケンドにいる可能性についてを聞くヒューバートに、まずいないだろうと複雑そうな表情で返して納得させる。
「・・・お前達がヴァン達について危惧するのは分かる。それでだが今の状況でお前達が最も危惧する事はなんだ?具体的にその可能性についてを提示してほしい」
「我々が危惧している事は障気及び外殻大地の問題を解決している最中、全兵力を持って攻め入られる事です。我々もあまり人目につかぬようにと動いてまいりましたが、これから先謡将達が我々の来るだろう場所に先回りもしくは待ち伏せという形で待機していてもおかしくはありません・・・いえ、我々だけが狙われる対象ならまだいいでしょう。可能性として上げるならアクゼリュスのパッセージリングを壊した時同様、他のパッセージリングを壊すことにあります」
「「「「!?」」」」
次にピオニーからの質問に答えたヒューバートだが、その中身は一斉に両陣営に驚愕をもたらした。パッセージリングを壊す=セフィロトツリーに寄って支えられた範囲の外殻大地の崩壊を招くとの事に。
「皆様の驚きは分かります。ですが現在の謡将達を取り巻く状況を謡将達がどのように感じているのか、その中身もですが謡将達の目的次第では有り得ない事ではないとは言えません。特に目的に関してはまだハッキリとこうだという決定打がありませんので、絶対にそうしないという保証はどこにもありません」
「で、では大げさではなく本当に有り得る事だというのか・・・そんなことが・・・!?」
「あくまで可能性の一つという形で提示しましたが、アクゼリュスを自分の手で破壊したと言わずに誤魔化したという点を踏まえれば、時間がどんどん経過していく上で自分達が追い込まれていっていると感じたなら謡将が力業に出てくる可能性は高くなっていくでしょう。その上でこの会談についてを謡将達が察しているとは思えませんが、大詠師がいないと知って謡将達が独自の路線を取ろうとキムラスカに渡りをつけようとしてくる可能性は十分に有り得ます」
「キムラスカに、だと・・・?」
「大詠師がいなくとも自分達はキムラスカに協力していると示す傍ら、情報を求めたりであったり利用をするためにといった多様な目的を持ってです。ただそうなれば謡将達の事をどうするにせよ、面倒な状況になるのは避けられないかと思われます。下手に誤魔化して謡将の手を振り払えば何かを勘づかれかねませんが、かといってそのような事態を避けると共にこちらの思惑を察することが出来ないようにして受け入れるにせよ、謡将達からして消極的な行動を取れば怪しまれる事は間違いないでしょう」
「・・・ということはあえて罠にかけることも踏まえても、ヴァン達を引き入れるという考えはあまり望ましくないという事か・・・」
「はい、そうなります」
そこからその可能性についてを話していく内にキムラスカへの接触も有り得るとヒューバートは言い、その危険性の高さについてを知らされたインゴベルトは苦さを滲ませた表情を浮かべる。










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