なだらかでも綺麗でもない道

「でもナナリーさん、どうして急に導師の事が気になったんですか?」
「あっ、確かに・・・」
「何て言うかねぇ・・・もしあの子がルミナシアにいたなら、ルークの考えも少しは変わってたのかなって思ったのさ。ホラ、あの子は体の事もあるけどティア達とは毛色が違うしさ」
「あぁ・・・何となくナナリーさんの言うこと分かります。体の事情もあってでしょうけど、ルークさんの感じだとイオンを放っておけないだろうし」
すずはそんな疑問が何故出てきたのかとナナリーに問い、うまく言葉にしようとしながら話す様子にアニーも納得する。イオンがいたら結果は変わっていたのではないかという可能性を思い。
「ですがそれを聞くにしてもルークさんが導師の部屋を出てからにしましょう。今からそれを聞くことは導師の手前もあって出来ませんし、時間は後で十分あるはずです」
「そうだね・・・じゃあカロル達にはまだって言うか、今日の内はミュウを引き留めてもらった方がいいね。ちょっと私としては腰を据えて・・・色々と話したいしさ」
「・・・そうですね、そうしましょう」
それですずがどちらにせよ後でと言ったことにナナリーはどこか決意を伴わせたように頷き、アニーもその様子を見て何かを感じたように同意する。



(・・・本当に、どうすればいいの私・・・?)
・・・一方、ティアは一人で自分にあてがわれた部屋のベッドに腰掛けながら何度目になるか分からない苦悩のスパイラルに陥っていた。と言っても今回は今までの比と言えるような状況ではなかった。
(もう、ナタリア達に私の言葉は届かない・・・と言うか、下手に届けようとしたら、取り返しのつかない状況になる可能性が極めて高い・・・私は、そんなことになるような事態なんて、全く望んでないのに・・・なんであんな風になるの・・・!?)
そこまでティアが思い詰めている理由は先程の状況を思い出し、自分が状況を最悪にまでしかねなかったことに加えて自分の言葉が思い通り伝わらない事を今更ながらに感じているからだ。



・・・ここまで来ても尚、ティアの考えは変わらない。それは以前の経験を頼りにしていることも大きいが、大きな事がまた別にある。それは自分以外に頼ろうとしない、ということにある。

今までの経験からジェイド達の事があるからそれは違うのではと思うかもしれないが、その経験を持ってるからこそである。自分がその未来に基づいた経験の元に動いているのだから、ダイクロフトの人間達は信じず私達だけで動くべきだ・・・そんな端から見て戯言としか言えないだろうことを声高に叫んでルーク達、特にジェイドが信じてくれるとは流石にティアも思えないために。

だからこそ心にその事を秘め、自分がより良い未来にすべく動くとティアは決めた訳であるが・・・現状はティアの思ったような展開とは到底言えない所か、遠くかなり隔たれている状況なのである。それも自分が仲間と信じてやまない人物達の関係が、もうかつてのようにというのは修復不可能と断じてもいいと思える段階に来るまでだ。

そういったジェイド達とのこの世界の関係も相まって、ティアは一人で行動しなければならない・・・そういった考えに囚われているのだ、自分一人でどうにかせねば・・・元々自分がどのように視野狭窄な人物なのか、誰かに相談すればせめてこの状況の打開に繋がるのでは・・・有効な手段は別にあるという事、もしくはヒントは別にあるということに全く思い至らないままに・・・


















・・・ティアが一人思い悩む中、イオンと長い事話をしたルークは部屋を出た。










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