望まぬ道と言うが望む道とは何か

「ティアの追求も終わって、これにて一件落着・・・なんて言えるような空気じゃ到底ないなこりゃ」
「フン!これで一件落着で十分だろう!こんなくだらない事を言い出すような女にはお似合いだ!」
「・・・っ!」
そこにアドリビトムの面々が集まってきてユーリが仕方無さそうに漏らした声に意気揚々とアッシュは罵倒を向け、ティアはまた一層憎々しそうな顔を浮かべる。
「・・・ま、こっちはそれでオッケーなんて感じじゃないみたいだけどね」
「何・・・っ、どうした、ナタリア・・・?」
「あ・・・えっと、その・・・」
だがルーティから意味深に視線を向けられた先を見てアッシュもそちらを向くと、ナタリアが気まずげでいて言葉を紡げずにいる様子に訝しげな様子になる。
「・・・ナタリアさんは今の話を聞いて少なからず不安に思ったのでしょう。もしかしたらアッシュさんが今のようなふとした瞬間に離れていってしまうのではないかと」
「「!?」」
(・・・私は・・・ナタリアにまでそんな不安を負わせていたの・・・!?)
理解出来てない様子にすずがナタリアの心理を推測した言葉を述べれば、アッシュだけでなくティアも驚愕して更に体が震えそうな思いを抱く。
「そうじゃないですか、ナタリアさん?」
「・・・はい、すずの言う通りです・・・カロルの言葉を聞いて、もしアッシュが私達から離れたらと思うと、怖くなってしまって・・・」
「っ・・・ナタリア・・・俺は・・・」
「・・・あ~もう、じれったいわね!ナタリアをがっかりさせたくないのかまだ考えがまとまってないのか知らないけど、今の話を受けて一緒に行くか行かないかくらいは言ってあげなさいよ!そうやって言葉を選ぶくらいなら理由は付けなくてもいいからどっちかくらいはね!」
「っ・・・」
それですずの確認にナタリアが悲し気に頷く姿にアッシュはどう答えようかと迷う様子になるが、ルーティが我慢の限界と激しく選択を迫る声にたまらず圧された形になり不満げながらも黙りこむ。
「・・・・・・悪かった、ナタリア。ヴァンの妹に頭が来たことは確かだが、今ここで離れる気は俺にはない。だから安心してもいい」
「アッシュ・・・!」
そして少し長い間を置いて覚悟は出来たとばかりに、他人に話し掛けるのとは比べるまでもない程に穏やかに落ち着かせた声で離れないとアッシュは告げ、ナタリアは嬉しさに表情を瞬時に綻ばせる。
「・・・あの、とりあえずこの話はここまでにしておきませんか?まだ陛下達が私達を呼びに来る時間があるとは思いますけど、その時に私達が揉めていたら呼びに来たらその人がどうするか分からなくなると思いますから・・・」
「・・・そうですね、そうした方がいいでしょう・・・いいですね、他の方々も?」
(・・・いくらなんでも、もう一度この話題を切り出す気にはなれないわ・・・時間もないなら、尚更に・・・)
ミントがその空気に申し訳なさそうながら話題の打ち切りについて切り出し、ジェイドも同意した上で周りに確認するよう声をかける・・・勿論と言っていいのか、流石に今の流れを再度持ち出す人物はおらずティアも意気消沈と言った様子で黙りこんだ。



(よかった・・・これで一安心か)
そしてルークは誰も何も言わない状況に内心ホッとする。一応の危機が去ったことで。






・・・それから十数分後、呼び出しの兵士が来るまで誰も何も発言しないまま時は進んだ。そしてルークにアッシュにナタリア、アドリビトムの面々からはすずにリオンにヒューバートが付いていく事となり六人は部屋を後にした。








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