望まぬ道と言うが望む道とは何か

「理由はそなたが勝手に我々の言うことを聞かないまま、バチカルを出ていったことにある・・・あの時わしらは口を酸っぱくし、行ってはならぬと何度も言ったのにそんな言葉を聞くことなくバチカルを出てルーク達に付いていった。そこでそなたの言い分は自分が行かなくてどうするか、という物だったが・・・そうしたということは同時に、そなたが行かなければさせなくてもいい不安や懸念を臣下に与えてしまったも同然の行動だったのだぞ」
「っ!?そっ、それは私達は生きているとの報告の手紙を出しましたわ!」
「その返答とも言える行動がどのようなものだったかを忘れたのか、そなたは?・・・ルーク達は殺された、その上で堂々とマルクトは嘘をついた、だから報復に戦争をするという物だったことを」
「っ!?」
「・・・無論、嘘だと断じた我々にも非はあることだろう。だがそれも元を糺せばそなたが勝手にバチカルを出た事にある。ルーク達に関しては・・・我々の方に責があると言えるだろうが、こればかりはそなたを擁護は出来んのだ。そなた自身の意志でバチカルを勝手に離れ我々を含めた臣下を心配させた、という事実に関してはな」
「っ!・・・だから、私に行き過ぎた発言は控えろと・・・」
「そうだ。状況の説明というか補足くらいなら特に何か言われることはないだろうが、そこで我が物顔で自分は正しいことだけをしていると言わんばかりの事を言えば臣下も気持ちよくはないだろうからな」
「・・・分かりました、私は大人しくしています・・・」
インゴベルトは慌てず務めて冷静と言ったように返していき、ナタリアはどんどんと意気消沈していき最後には力なく頷くしか出来なかった。
「よし、では部屋を用意させるから謁見の間の外で待機するがいい。準備が済んだら使いの者を出す」
「はっ、では失礼します」
(よく叔父上考えたな~、ナタリアを黙らせるっていうか大人しくさせるようなこと。と言うか事実をそのまんま言っただけなのかもしれないけど・・・つーか今改めて思うと、もしナタリアが俺達に付いていかずにいったらどうなってたのかな・・・ナタリアは・・・多分相当心を乱してただろうってのは想像つくよな・・・それこそ最悪、俺っていうか『ルーク』の弔い合戦だって陣頭に立ちかねない可能性もありそうな気がするし・・・)
インゴベルトはそこで話を一区切りと退出を言い渡しヒューバートが了承を返した後一同は部屋を後にする中、ルークは今のやり取りからもしもの時のシチュエーションを考え何とも言い難い気持ちを抱く。



・・・ルークが考えたのはもしあの時、自分達にナタリアが付いてこなかったなら戦争に反対どころかむしろ躍起になるだろうという姿だ。

ルークはナタリアが平和を望んでいない訳ではないことは知っているが、同時に王女としての立場を理解した上で激情家であることも知っている。
そんなナタリアがもし前のようにアクゼリュスが落ちてルークが死んだと報せを受けたなら、モースの言葉もあってマルクトに対して敵愾心をメラメラと燃やすだろう。自分の伴侶を殺した相手と和平など結べるはずがないと、むしろマルクトへの戦争賛成派筆頭として見られる形でだ。

そこにルークもしくはアッシュが現れ戦争をやめて欲しいと懇願すればすぐに意見を翻すだろうが、その時にはキムラスカの戦争賛成派筆頭と見られている事からそう易々と周りから立場を翻す事は許されないだろう。だがそれでもナタリアは周りの意見など気にせず味方をしようとするだろうが、そうなってしまえばナタリアに味方としての行動を期待することは難しくなるばかりか・・・最悪、モースが最後の手札として本当の『ナタリア』ではないことを明かす可能性すらあっただろう。ナタリアの対応について悩むインゴベルトを引き剥がす為に。

・・・そういった事を考えると、ナタリアがいてもいなくてもトラブルは起こりうる。そうルークは考え、妙な気持ちを抱いたのだ。どうしようにも、ナタリアにはトラブルが付き物なのではと思い。











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