戦場に際し開き、詰まる距離

「くっ・・・!」
「すみませんイオン様!でも今はトクナガに捕まっていてください!じゃないと神託の盾が追い付いてきます!」
「分かってます・・・!」
・・・タルタロスから離れるよう必死に走るティア達の中で大きくなって走るトクナガに辛そうに掴まるイオンにアニスは手を離さないようにと大きく声をかけ、なんとか頷く。
(なんで・・・なんでこんなことに・・・!)
だがティアはイオンに気を使うことなどなく、ただ今の状況に悔しそうに歯を噛みながら走っていた。






・・・さて、何故今ティア達がタルタロスの外にいて逃げるように走っているのかと言えばラルゴ達と相対した後の流れにあった。

とは言えそう複雑な事ではない。簡単に言えばその時にクレス達が率先してラルゴ達に当たったのだが、思いの外あっさりとラルゴ達は撤退したのだ。これはラルゴ達がクレス達がティアの予想以上に腕が立つのと共に、場にいたアドリビトムの面々の数の多さと攻撃に状況が不利と判断したからだ。

それでラルゴはすぐに神託の盾を呼んでくると言い残し場から去っていったのだが、その言葉にジェイド達はタルタロスからの撤退を決めたのだ。このままではラルゴのせいで神託の盾が自分達の元に集まってきてしまう為、もうタルタロスを奪回する事は出来ない状況になるからタルタロスを放棄し逃げ出そうと。

その決定に前のように行かせたいティアはすぐさまタルタロスを取り戻そうと反論してなんとか場に留まらせようとしたのだが、神託の盾の軍勢が場に現れたことで論ずる事はもう出来なくなり・・・その敵の数の多さから否応なしにタルタロスを出ることを余儀なくされたのだ、一同は。

とは言え反論していたのはティアだけで、前はタルタロスを取り戻そうと動いたジェイドですらも状況が危険であることにイオンの身の安全を優先して脱出を決めたのだ。ティアの言葉はすぐに聞く意味はないと思われ、皆が脱出の為に動く様子にティアもようやくタルタロスから出ることを決断せざるを得なくなったのだ。






(何よ一体・・・精々よかったことと言ったら大佐が封印術を受けなかったことくらいだけれど、ルークとも離れてしまうし神託の盾には追われて走らなきゃいけないし・・・本当にこの人達に会ってから散々だわ・・・!)
その時の事を思い出しジェイドの事以外ロクなものではないと後ろで追撃を警戒しながら走るクレス達に、ティアは忌々しいといった表情に視線を隠しもせず向ける。幸いにもその時は誰もその視線を見ていなかった。


















・・・そのようにティアが内心所か表までも酷く荒んでいる中、タルタロスに残っているルークに場面は移る。



「・・・お待たせしました」
「・・・ん?なんだよ、タルタロスまだ動いてるんじゃねぇのか?」
「私らも脱出しなきゃならないけど、下手に離れて行動したら離ればなれになっちゃうかもしれないからね。だから時間差でタルタロスが止まるように仕掛けをしてきたから、動くのはその時になってからだね」
「ふ~ん・・・ま、脱出出来んなら別にいっか」
ルーク達のいる部屋にすずとしいなが戻ってきたが、タルタロスには変化はない。挨拶をするすずにルークは指摘をするがしいなの時間差でとの返答に、ならと納得して言葉を引く。
(どうなるかな・・・ちょっと危険だとは思うけど、脱出する以外にないよな・・・すずにジュディス達なら何とか突破は出来るかもしれないけど、いざとなったら皆の為にも俺が切り込む・・・!)
‘ゴゥンッ’
「っ・・・タルタロスが止まったのか、これは・・・?」
「えぇ、そのようね」
そして内心でジュディス達を逃がすための決意を固めるルークだが、途端にタルタロスが巨体を揺らしてから静止したことに体勢を崩しながらも確認の声を上げる。






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