望まぬ道と言うが望む道とは何か

「・・・そんな心配そうな顔で俺らを見んなよ」
「あっ、ご、ごめんなさい・・・」
「もうここまで来ちまったら後はなるようになるしかねぇのもそうだし、少なくとも俺からしたら父上達に会うのはこれから先の事を考えたら避けられるもんでもねぇんだ・・・だから俺の事は気にすんな」
「はい、分かりましたわ・・・」
その視線に当然気付いたルークに覚悟済みだと悲痛な決意を感じさせるような面持ちで返され、ナタリアもそれ以上は突っ込めずに了承して会話を終わらせる以外にない。



(また・・・本当にいいのかしら、このルークの変わり方の感じで・・・?)
ティアはルークのその姿にこのままの形でいいかと再度考えるが、だからと言って打開策が脳内に浮かぶことはない。
「まぁアッシュはグランコクマで行くと言っていただいたので聞かずともよいでしょう・・・反対意見がないなら一先ずファブレ邸に行きましょう」
それでジェイドが空気をまとめるように話を進めた事で、他の面々からも反対の意見は出ることはなく一同は先へと足を動かしていく・・・



・・・そしてバチカルの最上層に辿り着いた一同は、まっすぐファブレ邸へと向かう。
「・・・っ!?ル、ルーク様にナタリア様!?ど、どうしてこちらに!?」
「・・・今父上は屋敷にいるか?」
「は、はい・・・おられますが・・・」
「悪いが、父上に外に来てもらうように頼んでくれ。火急の用なんだ」
「はっ、す、すぐに伝えてきます!」
それでファブレ邸の前まで来たら門番の兵士が二人の姿に驚愕を隠せない様子で対応し、対照的に落ち着き払ったルークの要求に焦った様子で敬礼して中へと入っていく。
「・・・あそこまで慌ててるって事は、もう俺達は死んだくらいは伝えられてたんだろうな・・・」
「そうでしょうね。戦争の為という大義名分もそうだけど、あんた達が長時間バチカルに戻ってこないとなれば下手に生きていると思わせるよりはそう伝える方が手っ取り早いくらいは向こうも考えるでしょ」
「だよなぁ・・・」
そんな慌ただしい様子を見てそっと呟くルークに、ルーティが返した言葉に頭をかきながら納得する。そうするのも当然だと。



・・・それから数分後、屋敷の外で待機していたルーク達の元に公爵が姿を現した。
「・・・まさか本当に戻ってきていたとはな・・・ルーク、それにナタリア様っ!?・・・どういう事だ、ルークが二人だと・・・!?」
公爵は厳粛な空気をもって対峙をしようとしていた・・・が、ナタリアの側にいた気まずげなアッシュの姿を見て即座にルークとアッシュを交互に見やりながら動揺を露にする。
(父上達は師匠から事実を知らされてない?ならチャンスか・・・!)
「・・・師匠から連絡を受けてないんですか?俺とアッシュの事を」
「っ・・・どういうことだ、ルーク・・・その言い方だとヴァンがお前達の事に関与しているとでも言うのか・・・!?」
(あぁ、やっぱり知らないっていうか師匠は報せてないか。俺達のこと・・・まぁ直にバチカルに俺達が来ることとかも含めて、事実が知られる事はないとでも思ったから言わなかったんだろうな)
そんな様子にある種の確信とチャンスと感じながら表向きはとぼけたように話すルークは、公爵が更に動揺をしている姿を見て断定する。自分達の事は知らされてないと。
「・・・どうやら謡将は肝心な事をキムラスカに情報として渡していなかったようですね。ただそうとなれば少し話が変わりますので、陛下にお目通りを願う前に公爵に先に真実についてお話した方がよろしいでしょう。その方が公爵も色々と納得出来るでしょうからね」
「・・・何がどうなっているのか分からんが、説明をするというならありがたい。だが屋敷の入口で話をするわけにもいかん・・・屋敷の中で話すかと思ったが噴水の前に行き、話をするぞ」
「分かりました」
ジェイドもその様子を察した上で話をするために流れを持っていき、いくらか落ち着いた公爵が場所変更を願った上で同意したことに了解を返す。








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