激動の前の人々の心の動き

「そして更に言うとだが、直に会談を行うにしたってそうするためにそうそう長く準備に時間は取れない事にある」
「準備の時間ですか?」
「あぁ。ザオ遺跡にタタル渓谷と次々にセフィロトを降下させたが、その二つの土地に住む人間達の安否が時間が経つにつれて危うくなっていくのは避けられん。そんな中で俺達の安全の為にと何週間も時間を費やすような事になれば、壊滅的な被害をその土地に住む者達が受けることはほぼ確定的だ」
「っ!・・・それは、そんなことは避けねば・・・!」
「あぁ、俺もそう思っている。だがこういう言い方は誉められた物ではないと分かっていて言うが、一時の少数の人々の命を優先させて後の大乱という火種を見過ごすような真似も迂闊にしたくない・・・と言うのが現状だ。だからこそどうすればいいかとこちらも考えている」
「そう、なんですか・・・」
続けて時間の事を持ち出すピオニーだがそれらを軽視する事がどれだけ危険なのかを強調する話し方に、イオンだけでなく周りの面々もたまらず苦いといった表情を浮かべる。
「・・・そういうことなら、もういいんじゃないか?皆」
「えぇ、そうね・・・そろそろそうせず動くことが難しくなってきた事だし」
「・・・何だ?何かあるのか?」
そんな中で意を決したように声を上げるクレスにジュディスも同意と頷くが、当人達だけがわかりあっているやり取りにピオニーは何の事かと問う。



「陛下、今まで黙っていてすみません・・・実はダイクロフトの移動装置に関しての事ですが、各地に装置を設置するのに時間がかかるというのは嘘です」



「「「「!?」」」」
(ここで言うのか、クレス達・・・まぁ今の状況じゃ仕方ない感じはするとは思うけど・・・)
クレスはそこできっぱりと装置の事を嘘と言い切りイオン達が目を見開く中、ルークは内心で妥当ではあると考える。
「・・・それが本当だと言うなら、何故俺達に今までその事を黙っていた?」
「主な理由としてあまりにもこちらが行動を早く起こしすぎたならキムラスカやモースに謡将達を妙な形で焦らせるんじゃないかということもありますが、理由の中で最も大きな割合を占めるのはナタリア殿下を始めとしてダイクロフトを経由してバチカルに直行すれば事態は解決する・・・そう言い出されるのを避けるためです」
「なっ!?」
ピオニーは静かに、だが真意は聞かせてもらうと力の込められた視線を向けるとクレスが口にした言葉にナタリアが絶句する。理由という矛先が自分に来たことに。
「勿論、事態の解決が早いに越したことはないという殿下の気持ちは分かります・・・ですが少なくともこのグランコクマに初めて来た程でそうしたなら、今頃はこんな風に和平までにこぎ着ける事はないばかりかむしろ戦争になっていた可能性は十分に有り得ていたと僕達は思っています」
「・・・成程、気持ちとしては確かに理解出来るな。急いては事を仕損じるとはよく言うが、お前達がグランコクマに来た頃だったならモースはまだ存命中でバチカルにもいる。そんな状況で大丈夫だとタカをくくってバチカルに突撃していたなら、精々よくて導師に殿下が捕縛からの幽閉で済んで他の奴らは処刑される事は免れられんのは目に見えている。特にアッシュとルークはアクゼリュスの件もあるから、モースからしたなら生きていられたら困る人物だから最優先で殺される可能性が高かったことだろう」
「「「っ!」」」
すぐさまクレスは悪意はないとしつつも危険性の事について口にし、ピオニーが納得しながら漏らした予測にナタリアだけでなく名前が出てきたルークとアッシュの二人も思わず息を詰まらせた・・・預言の事があったからこそ危なかったと、改めて突き付けられた事で。








20/23ページ
スキ