激動の前の人々の心の動き

「それじゃあ二人は元の部屋に戻ってくれ。これから俺達はまた話し合いをしなければならないんでな」
「はい、では失礼します・・・」
そしてピオニーがもう用は済んだと退出を命じれば、ガイが返事をしてから二人は頭を下げて謁見の間を後にしていく・・・未だ未練がましそうでいて、絶望に足を踏み入れているティアの視線を背中に浴びながら。



「・・・さて、二人も戻ったことだし本題に入るが、キムラスカからの手紙が届いた」
「っ・・・それで、どういった内容だったのですか?」
それで二人が場からいなくなったのを確認してから仕切り直しだとばかりに話を切り出すピオニーに、イオンは息を呑みつつ先を促す。
「大方こちらの予測通りだ。向こうも今の状況でこちらと争うつもりは流石にないらしく、和睦に関して前向きと言った姿勢になっている。おそらく直に使者を送るか、会談を行おうとこちらから投げ掛ければ向こうも乗ってくるだろう」
「それほどの状況だと、手紙の中身で分かるのですか?」
「あぁ、向こうはこちらと比べて情報が格段と少ない分取れる手も少ないだろうしな。モースがいないだろう事もあるが、ヴァン達の協力がないことで」
「・・・ではそういうことなら早速こちらから和平について切り出さなければ・・・!」
「俺もそう思っているんだが、ここで一つ選択しなければならん・・・それは後で裏切られる可能性も残る紙面上での和平に満足するか、それとも多少の危険は覚悟の上で直にあちらとの会談に赴くかをな」
「え・・・?」
ピオニーは経過は順調だと言いつつも選択する必要があると言い、イオンはどういうことかと眉を寄せて疑問符を浮かべる。
「何故こんなことを言うのかと言えば、紙面上での言葉を単に信用していいのかという事だ・・・こちらはナタリア殿下達も含め、バチカルの詳しい内情について直に見聞きしている人物はいない。そんな状態で手紙のみのやり取りだけではい和平成立なんてのは、こちらから言わせてもらえば無謀な賭けにも等しい行為だ。向こうが何もしないことをただ願って、それで向こうが攻撃を仕掛けてきたなら今まで積み上げてきたもの全てが一瞬でパーになるんだからな」
「さ、流石にお父様もそのようなことは・・・」
「そういうナタリア殿下も信じたいという気持ちはあっても、流石に無責任にキムラスカは大丈夫だと言い切れない気持ちも今までの経験上から感じているようだな」
「っ!・・・はい、その通りです・・・」
ピオニーはその選択肢の一つの手紙のみのやり取りで決めることの非についてを言うとナタリアが反応するが、今までの勢いが全くないことを理由つきで指摘されて悲し気に目を背けながら肯定をする。
「そう思っているなら何よりと言いたい所だが、だからといって会談を行うにしてもそこでまた問題がいくつかある。まず一つ言うならどこをその場とするかだ」
「場所、ですか?」
「あぁ、今回の件からケセドニアはその近辺の大地ごと魔界に落ちてしまったから中立でやれる場所はどこかとなれば適しているのはダアトになる。だがダアトでやるにはケセドニアが落ちている事から船で行くにはキムラスカにマルクトの、どちらの立場から言っても距離が空きすぎている。ならどちらかの領土でやればいいという意見もあるかもしれんが、元々の両国の関係を考えればもしもの事が起きる可能性も否定出来ん・・・つまり、今の状況では適切な場所を見つけることも難しいんだ」
「そう、なんですか・・・」
そんなナタリアから視線を戻し話を進めるピオニーだが、場所についての話を受けてイオンの顔が複雑そうに歪む。確かに難しい事だと思ったが為に。











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