戦場に際し開き、詰まる距離

「ちょっと待って!何を貴方達が勝手に決めているの!?逃げたいなら貴方達だけで逃げればいいじゃない!私達には関係のないことよ!」
だがそんな事など許せないとティアは声を荒らげる。自分達の中に入るな言わんばかりに。
「話を聞いていなかったのですか?この状況でひとかたまりになるのは危険だとすずちゃんは言っているんですよ」
「そんなことは関係無いわ!貴方達の言うことを聞く理由はないと私は言っているの!」
ヒューバートが呆れ気味に眼鏡を押さえながら再度道理を説くが、頭から聞く必要はないと切り捨てるティアはまた再度声を荒らげて拒否を示す。
(クレスも気になるけど・・・本当にこっちもどうしたんだ、ティアは?頭ごなしに否定ばっかりして、なんですずにヒューバートの言葉を聞こうともしないんだよ・・・言ってること自体は間違ってないはずだろ・・・?)
その光景にルークは確かな不信感をティアに覚えていた。今までも含めた頑なというにはあまりにも一方的過ぎる態度の数々に。
「・・・どうやらそうも言っていられないようですよ」
「っ、あれは神託の盾にラルゴ・・・!」
そんな場にジェイドの声が響きティアがその視線の先を見ると、通路に現れたラルゴ達の姿に苦虫を噛み潰したような表情に変わった。
「・・・もう話してる暇はない。すずちゃんに何人かはルークさんに付いて脱出を頼む」
「分かりました、では付いてきてください」
「ちょっ、何を・・・!?」
(すずが持ってるのって、爆弾!?)
クレスも緊迫した表情ですずに後を託しすずはルークの手を取るが、もう片方の手に持っている黒い球体にルークは素で驚く。
‘ボンッ!’
「ゲホッ、ゴホッ・・・!」
「おのれ、目眩ましか・・・前が見えん・・・!」
(すずが持ってたのは煙幕弾か・・・ってこれ俺どこに連れてかれてんだ・・・!?)
だがすずが両者の中間点辺りに投げたその球体は地に触れた瞬間白い煙が辺りを包みだし煙に包まれたラルゴ達が困惑の声を上げる中、見えないながらもその横をすずの手に引かれながら通り抜けたルークは半分ほどしか状況を理解出来ずただ自分の周りに何人かいる事を感じながら走っていた。



「ちょっ、どうなっているの・・・ルークは一体・・・!?」
一方場に残される形になったティアは必死の形相でクレスに視線を向ける。余計なことをしたと顔だけでも言っていると分かるように。
「言っただろう、ここは早く脱出してもらうべきだと」
「だから言ったじゃない!逃げるなら貴方達だけで逃げろって!・・・本当に余計なことをしてくれたわ・・・!」
「やめてくださいティア!クレスさん達も状況の打開の為に動いているんです!それが分からないんですか!?」
「イオン様・・・ですが「はいはい、揉めるのはその辺りにしておいてください・・・そろそろ煙が晴れますよ」・・・くっ・・・!」
クレスは冷静に返すがヒートアップしていくティアの様子に見かねてイオンが激しくたしなめる声をかけるが、全く引く様子を見せずに返そうとする中でジェイドの声に煙が無くなりつつある前方を見てようやく悔しげにしながらテンションを落とす。
「くっ・・・目眩ましとは随分と古典的な事を・・・だがもうその手にはかからん。それに何人か逃がしたようだが我々の元々の目的は導師だ。この程度ならどうということはない」
「くっ・・・!」
(早くラルゴを倒してルークの所に行かないと・・・じゃないとルークが死んでしまう・・・!)
そして煙が晴れてラルゴが大鎌を構えながら油断しないと鋭い視線を向ける姿を見て、ティアは焦りに心を揺らしていた。アドリビトムの面々に信頼など出来ないのだから、早くルークの元に行きたいと。












・・・そのようにラルゴとティア達が対峙する中少し時間は進み、すず達と半ば強制的に場を離れたルークは脱出・・・と言うわけではなく、タルタロスの中の一室で荷物置き場になってる部屋の奥に隠れるよう身を潜めていた。







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