激動の前の人々の心の動き

「・・・ま、今日はここまでにしておくから後はゆっくりと考えろよ。今後の事についてな・・・約束通りルーク達には何も言わないでおくが、もし混乱したからって訳の分かんない考えになってあいつらに手を出すようなことをしてみろ・・・お前、生かしちゃおけなくなるぞ?」
「っ!?」
そして場を最後にしようとユーリが注意を向けるのだが、冷たく殺意を滲ませる表情と声にたまらずガイは圧されて息を詰まらせた・・・普段の淡々としたユーリにない、覚悟を決めたほの暗さを前にして。
「・・・じゃあな。数日後にまた会うことになるだろうが、その時には決めておけよ。自分がどうするかって事をな」
「後、分かっていると思いますがここで話した事で決意したということについてはその時には話さないでください。ガイさん自身の事も含め色々と説明が出来ない事が多いですから・・・では私も失礼します」
「っ・・・・・・俺は、俺は・・・・・・」
ユーリはそれだけ言うと部屋から退出していき、すずもまた注意を残してから部屋を後にしていく。そして残ったガイは膝から崩れ落ち、呆然とした声を漏らす・・・ガイを支えてきた根幹である復讐とその後の自身の望む未来はもう、掴める物ではないと否応なしに理解させられたために・・・












「・・・よう、戻ってきたぜ」
「もうガイさんに関しては大丈夫だと思われます。あの様子ではもう無理にでも復讐を果たそうという気持ちは起きないでしょう」
「そうか・・・済まなかった、二人とも・・・こんな事を任せてしまって・・・」
「気にすんな。あの様子じゃ何もしなかったらガイが暴走してただろうって俺も思ったしな」
・・・そして二人は部屋に戻った、のではなく夜のグランコクマの街中の一角で待っていたルークとリオンとナナリーとアニーの元に来た。
ただルークが極めて申し訳なさそうな表情だった為、ユーリはガイに向けていた表情と比べ物もないほど穏やかな微笑を浮かべて返す。
「・・・でもそう聞くと、やっぱりちゃんとした形でガイが納得出来るようにしたかったな・・・今の状況じゃどうしようもないって所があるのは分かってるけどさ・・・」
「それを言うんなら前の時だってガイにとってどうしようもない状況だから、自分はガルディオスの生き残りだって言ったんじゃなかったのかい?」
「確かに私もそう聞きました・・・シンクのカースロットで操られてルークさんに斬りかかったことから、ルークさんに対して憎しみを抱いていることが発覚したと・・・」
「っ・・・そう言えば、そうだった・・・確かにあれがなかったら、ガイがガルディオスだってあの後の旅で明らかになってたかどうか・・・」
ただそれでも手段についてを苦く思うルークにナナリーとアニーが口にした以前の事実に、ハッとして思い返す。自分が襲われた事実が無ければ、ガイが言っていた可能性はあったのか分からないと。
「・・・おそらくガイは自分からガルディオスだと言いはしなかっただろうな。可能性としては事が進んでヴァンがお前達を動揺させる為とガイを自分の側に引き入れる為にバラすという手段を取った時か、和平の会談の時に衝動的に行動を移すかどうかくらいだろうがそれ以外では口を割ったとは思えん。むしろ自分が復讐を企てていたなどと自分から言い出すような物好きな輩などまずいないだろう。言えば自分の立場に心証はまず間違いなく相当に悪くなるのが目に見えているからな」
「・・・あ~・・・そう言われると、そうとしか思えなくなってきた・・・ガイの立場からすると余程じゃなかったら絶対に言い出すことが出来ない事だしな、復讐の事なんて・・・」
更にリオンがその可能性についての具体的な事例を口にしてきた事に、ルークは思わず納得していた。それだけガイは自分から言い出すような事はしたくないだろうということを。










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