激動の前の人々の心の動き

「・・・・・・頼む、二人とも・・・ルーク達にはその事は言わないでくれ・・・認める、俺がガルディオスの生き残りだってことは・・・」
「・・・成程、素直に認めてくれたか」
・・・そして長い長い葛藤を終えてガイが出した結論は、本音の吐露だった。
観念したように顔を下げて何も言わないようにと願うガイのその姿に、ユーリは冷静に受け止める。
「・・・なぁ、二人とも・・・これからどうなるんだ、俺は?お前たちが俺の事を言わないんなら、何が目的で俺にこの事を言いに来たんだ・・・?」
「・・・ま、当然そいつは気になるか」
「こちらの要望は簡単なこと・・・貴方には復讐を諦めてもらい、このマルクトに亡命という形で帰郷してほしいんです」
「っ、それは・・・俺に、復讐をさせない為にか・・・?」
「えぇ、そうです」
そこから顔を上げ不安そうに二人に伺いを立てるガイに、すずは独特な言い回しをして復讐を止めてもらいたいと伝える。
「ガイさんが私達と別れるまでの状況ではまだ様々な危険がありましたが、今の状況なら余程何かが無ければキムラスカとの和平も無事に締結出来るのではないかという段階にまで来ています。ですが元々キムラスカは預言の為と言うのもありますが、マルクトと戦争をすると実際に決断するくらいには戦ってもいいと思える気持ちがあるのです・・・そんな気持ちを向こうがこちらが動いていると知らないとは言え、燻らせたまま和平を受けざるを得ない状況にしてしまう。そのような時にもし貴方がファブレに対して復讐を果たしてしまったならキムラスカはまずマルクトを疑い、貴方がガルディオスとして名乗り出た場合もそうですが、誰も何も言い出さなかった場合はまずマルクトの仕業だという話になり・・・戦争に気運は一気に高まるでしょう。その時は預言も関係無い形でです」
「っ!?・・・そんな・・・預言も関係無い形でだなんて・・・」
「今の状況は預言があってこその物です。アクゼリュスを落とした事もそうですし、それで戦争をしようというのも。しかし貴方の復讐に関してはキムラスカやマルクトの関わらない個人的な物でしかありません・・・そんなものが預言と関係するはずもありませんし、むしろ関係無いからこそ戦争に向かう気運は加速することは避けられません。キムラスカもマルクトもダアトも三勢力全てがそうなると予測に覚悟もしていない状況でファブレが滅ぼされたとなれば、いかに上層部が人々をなだめようとした所で心を落ち着かせるのは難しいでしょう。キムラスカを憎し敵と見るマルクトの人々からすれば怨敵の筆頭であるファブレが滅びたなら次はインゴベルト陛下をとなるでしょうし、マルクトを敵視するキムラスカからすればこれはマルクトの仕業だと推測して敵愾心を燃やすでしょう・・・そうなればもう預言かどうかなど関係無くなります。いえ、そればかりかアクゼリュスから発端する件からどちらが責があるかと話題を掘り起こされた上でダアトまで巻き込み更なる擦り付けあいにも発展すると見られます。そうなれば後はもう泥沼です。戦争を止めるにはもうどちらかが滅びる以外の終着点はないでしょう・・・そんな展開をガイさん、貴方は望みますか?」
「っ!!・・・俺は・・・俺は・・・!!」
すずが長いながらも確かな危険性を感じれるような話をしてきた上で投げ掛けてきた問いに、ガイは両手で頭を抱えて何度も首を横に振りだした・・・見るからに自身が復讐を果たした時の代償がそこまで行くとは考えていない様子であり、その責任を受け止めれるはずがないと自分自身自覚しないながらも露見していると言った姿であった。









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