戦場に際し開き、詰まる距離

「これは・・・ただ事じゃない・・・!」
「そうね、何か重大な異変が起きているのは確実のようだわ」
対してアドリビトムの面々も事態の大きさに気付き、クレスにジュディスの会話が耳に届きルークは内心焦りに満ちていた。
(まずい・・・くそっ、この状況じゃ変にここから皆を離そうとしたら余計に危険になる・・・こうなったら、ジェイド達と合流しないと・・・!)
「だーっ、くそっ!一体何が起きてんだよ!」
「ちょっと、どこに行くんだい!?」
「あの眼鏡に何が起きたか聞きに行くんだよ!お前らだって何が起きたか知りてぇだろ!」
‘バンッ!’
「ちょっ・・・!」
その中でルークは必死に考えをまとめ、怒りと焦りを浮かべ・・・ナナリーの制止の声を振り切り、勢いよく部屋を出る。
(流石にここまでくりゃ皆も動くというか、動かざるを得ない・・・それで皆の実力ならここも無事に抜けられるかもしれない・・・神託の盾に包囲される前ならもしかして・・・!)
ルークはティア達の方に向かいながらも考える。これで少しでも逃げれる可能性が出てくるだろうと。
「・・・ルーク!」
「おい!なんだよさっきの!?」
「今からそれを確かめます!少々待っていてください!」
(よし、こっちは誰も欠けてない・・・ってイオンもこっちに?もしかして待ってたのか、俺が戻ってくるのを・・・?)
それで部屋から出てきたティア達と合流し会話を交わすルークだが、ジェイドが前のよう状況を確認するようブリッジに声をかける中でイオンの姿があったことに内心眉を寄せる。



(どうしたものかしら・・・イオン様がルークを待って残っていたのは誤算だわ。これじゃあアニスが先行してセントビナーに向かう理由が無くなるし、下手をすればここでイオン様を巡って神託の盾と衝突して逃げる事すらままならなくなる可能性が・・・!)
そんなルークの予想は当たっていた。だがティアの心中はそんなルークに関係無く焦りに満ちていた。このままではまずいことになると。
「・・・まずいな、この状況・・・このままだとここにも敵が・・・」
「クレスさん、早くここを出るべきです。ただここでルークさんに導師を見捨てるようなことはまずいことになると思います」
「そうだね・・・じゃあすまないがすずちゃんに後何人かはルークさんに付いてここを脱出してくれ。僕達は導師にジェイドさん達のことを守るから」
「「はっ!?」」
そこにアドリビトムの面々も集まってきたのだが、ジェイドとブリッジの会話を聞いたクレスとすずの会話にルークとティアの二人は声を揃えて驚いた。脱出することが前提・・・そう言った流れを決めていることに。



「お前ら一体何を勝手に言ってんだよ!つーかなんでお前らと脱出しなきゃいけないんだっつーの!」
「状況から見てこの場は戦場になります。今は敵の手はこちらにまで伸びてはいませんが、いずれそうなることは避けられません。そうなれば敵の数が相当な物と会話から見受けられる以上、命の危険に繋がる可能性が高まります。そうなる前に脱出すべき・・・そう思って発言したのです」
「っ・・・危険、だってのか・・・」
(良かった・・・皆も状況が危険だって理解してくれてるみたいだ・・・けどどうして俺とイオン達は別なんだ・・・?)
その流れにルークはすぐに反発の声を上げるとすずが冷静な口調で訳を述べあげ、その事に安心すると同時に疑問を抱く。
「じゃあ、なんで俺とこいつらは別なんだよ?」
「このままここでひとかたまりに動いていたら敵の手がまとまって襲ってくるかもしれないからさ。ここは二手に分かれて逃げた方が敵の目も分散するんじゃないかってね」
「ふ~ん・・・」
(なんだ・・・理由はまともだけど、クレスはこう言うことを言うような奴じゃなかったよな?クレスって言っちゃなんだけど、ここまで合理的な事を言う感じはなかったはずだけど・・・)
素直にその疑問をぶつけるルークにクレスは理由を語るが、納得する内心と裏腹に新たに疑問を抱く。クレスらしくないと。







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