心は揺れ動く、良くも悪くも

・・・そして港に着いたイオン達は用意してあった船に乗り込み、ダアトを後にする。



「・・・アニスに話を、ですか?」
「はい、まだ決まった訳ではありませんがキムラスカとの話し合いが成功すればアニスの懸念も無くなると思います。ですからトリトハイムには導師守護役については大丈夫と言っていたんです」
それで甲板の上で一同が場に介する中、ヒューバートとイオンは先程の会話についてを話す。
「ではアニスだけではなくガイにも話をするべきです、イオン様!」
「っ・・・いきなりですね、ティア・・・少し驚きました・・・」
「あっ、すみませんイオン様・・・ですがアニスに戻ってきてもらうなら、ガイも問題はない筈です・・・!(これは千載一遇の機会だわ・・・アニスもそうだしガイも戻ってくると言うなら、今の状況も何とか前のようになるはず・・・!)」
そこに大声でガイの事をと切り出すティアにイオンは驚いた様子を見せるが、内外共に逸る気持ちを抑えきれずに二人とも戻ることに想いを馳せる。
「・・・今から彼らがやるべき事はあるのでしょうかねぇ・・・アニスはまだイオン様の導師守護役としての役目がありますから分かりますが、ガイは無理に誘わない方がいいのではないかと思うのですが」
「大佐・・・ガイは必要です!」
「貴女が何を以てそう言っているのかは分かりませんが、そうするかを決めるのは彼です。それに今から私達に合流するとなれば、モースの事を始めとして様々な事を知った上で黙らねばならぬ事実が増えるのです・・・そんな状況に彼を巻き込む事もそうですし、彼の立場は我々と違いファブレの一使用人という最も一般人のカテゴリに近い人間。そんな彼に無理に我々の元に付いてきてもらう事はあまり感心出来る事ではありません。後々の事を考えればね」
「後々・・・(・・・ガイはマルクトにガルディオスとして戻る、身・・・!?)!?」
だがジェイドが明らかに乗り気でない様子にティアは強く反論するが、後々の事という言葉に内心で考え事をしようとした時にハッとある事に辿り着いて息を呑んだ。
(そうよ・・・このまま行ったら、ガイがガルディオスに戻ることがないどころかその事を明かすこともなくファブレに戻って・・・最悪、アッシュにルークを巻き込んでのファブレへの復讐を行いかねない・・・!)
そのある考えとは・・・このまま行けばガイがファブレに復讐する可能性の高い未来が待っているのでは、という物。今まで他の事に考えを取られロクに考えていなかったガイの危険性に気付き、顔色を青くする。ファブレもそうだが二人、特にルークを殺しかねない事態が有り得るとのことに。
「・・・どうしましたか、ティア?」
「っ!?えっ、あっ、いえ・・・な、何でもありません大佐・・・」
「・・・そうですか」
そんな様子にジェイドは声をかけるが、明らかに動揺に揺れながら物事を誤魔化そうとするティアの姿に眼鏡を手で押さえながら興味なさそうに返す。
「・・・まぁ私としては戦える人間が増えることは別に構いませんし、本人がそうするというなら止める理由は私にはありません。アニスに話をする時はガイにも来るかどうかの選択をするかどうか聞いても問題はないでしょうね」
「あ・・・」
「何ですか、ティア?貴女が自分から言い出した事なのに自分の言ったことを覆して反対とでも?」
「っ・・・いえ・・・(まずい、ガイはそんなことしないって信じたいけど・・・少なくてもガルディオスであることをガイ自身に言ってもらわないと・・・私が言ったら何故知ってるんだって言われるし・・・!)」
そこでジェイドは本人がいいならいいだろうとガイに話を進める方向にしようとするが、ティアが反応した事に少しあからさまに鬱陶しそうに問いを向ける。そんな声にティアは顔を背けるしかなかった・・・自分が言い出した事を否定も出来ない上にうまく事を進めるにはどうすればいいかと必死に頭を動かそうとしなければならなかった為に。









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