心は揺れ動く、良くも悪くも

「・・・それじゃあ、兄さんはそれも知った上で行動したのね。自分が殺されかけたのにそんなことを考えず、自分を預言を守る為の街の市長にまでさせられる予定なのだと知って・・・」
「・・・そう、なのだろうな・・・」
ティアはその姿にヴァンの内心を察したように考えを漏らし、市長は一層苦い顔を浮かべる。
「・・・お祖父様、もういいですか?早く行かないとイオン様達と距離が離されてしまいますから」
「・・・待ってくれ、ティア。最後に一つ聞かせてほしい・・・お前自身は今どう考えているのだ?その、なんというか・・・ヴァンの事も含めた上で、ユリアシティの事を・・・」
「・・・」
しかしティアはすぐにまた興味を無くしたと言ったように戻るように切り出すが、市長が最後にと嘆願するようユリアシティの事を聞いてきたことに考え込むように目を閉じる。
「・・・お祖父様やこのユリアシティの皆には感謝しています。私をここまで育ててくれたことには。ですが今の私から見ればもう、お祖父様達は過ちの上で形作られた物でしかないと思っています。兄さんの事を始めとして、預言を優先して人の気持ちなど考えていないんですから」
「!!」
「・・・変わってください、お祖父様。このユリアシティと共に・・・それがこれからの世界の為になると思うので。では私は失礼します」
「・・・ティア・・・」
そして目を開けたティアから出てきた糾弾といった言葉を感情なくかけられ市長は驚愕に目を見開くが、そんな様子から出ていく前に最後に一言残したことに複雑に表情を歪めてうつむいてしまう。



・・・ティアが突き放すようでいて、何かを望むような物言いをした事により市長は混乱をしてしまったが何故そんな言い方をしたのか?それは言ってしまうなら、悪い意味でティアが市長を信頼しているからである。

ティアは以前の経験からユリアシティはモースと違い、外殻大地がアクゼリュス以外もそう長い間持たないと知ればすぐにこちらになびいてくれるとそう考えていた。そしてその考えは事実そうなったのだが、それだけならティアが最後に一声かける明確な理由にはならない。なら何が理由なのかと聞けば、市長がティアにとっての数少ない肉親の一人だからだ。

元々小さかった頃のティアの面倒を主に見ていたのは、兄でありまだ少年期の頃のヴァンである。その為にヴァンと市長を比べてどっちに情が行くかとティアが判断するかとなれば間違いなくヴァンではあるが、それでも肉親に対する情が市長に対してないわけじゃない。むしろティアからすれば市長への情は他者とは比べるまでもなく高い部類に入る。

しかし今のティアからして、市長に対してかけるべき信頼は一切ない。何故なら今のティアが欲しい物はルークを始めとしたジェイド達とのかつてのような関係であって、既に確定したと見た結果に対しての興味はないのだ。市長を始めとしたユリアシティの変化という結果には。

・・・だからこそティアはこれでいいとばかりに自分の言いたいことを言い放って場を離れたのだが、いくら前例があるからといって肉親でなくとも他人に対しておざなりな態度を取っていいわけはない。はっきり言ってしまえばティアの発言は他者を軽く見た物でしかなかった・・・















・・・そのようにティアが人間関係に関して問題となり得る行動を起こす中、一方でルーク達はタタル渓谷のセフィロトにまで来ていた。











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