「・・・それで何の用でしょうか、お祖父様？」
「・・・うむ、久しぶりに会ったお前の顔が何故そこまで曇っているのかやはり気になってな・・・どうしたのだ、一体？やはりヴァンの事がショックだったのか？」
「・・・いえ、そういうわけではありませんが・・・」
ティアは早速呼び止めた理由について聞くが、市長の心配そうな問い掛けに目を伏せ首を横に振る。
「では一体なんだというのだ？私にはお前がそこまで辛そうな顔を浮かべている理由が思い付かないのだが・・・」
「・・・そんなに酷いですか、今の私の顔は？」
「・・・うむ。こう言ってはなんだが、人前に出てはいけない顔にしか見えん。まず誰もがお前を見ればそう思うだろうというほどにな」
「・・・そうですか」
尚も心配と声をかけてくる市長にティアは返事こそ返すが、その中身に関心などないとばかりに感情など見せない。
「ティア・・・一体どうしたというのだ？」
「・・・お祖父様には関係のないことです。私に預言の事を黙っていたお祖父様には」
「それは・・・いずれ伝えるつもりだった、預言が達成した暁にだ。本来預言の中身は達成されるまではそうするための実行者以外にはこのユリアシティの歴代の市長のみの内心に秘められるべき物で、達成したその時にこそユリアシティの住民からダアトに徐々に広がらせ世界に浸透させる物・・・それは例え孫娘であるお前とて、例外を許す訳にはいかなかったのだ」
「・・・では何故兄さんにはそれを知らせたの？兄さんはホドで自分の命すら危険な状況にあったというのに、それを全く考えてもいなかったの？・・・お祖父様は」
「っ！・・・そ、それは・・・」
それでも何故と食い付こうとする市長だったが、次第に質問する側からされる側になっていき追い詰められた挙げ句、核心をつかんばかりに冷たくティアからヴァンの気持ちを考えなかったのかと虚ろな表情で問われて思わず口ごもる・・・その様子の異常さもあるが、本来ティアはこの時点ではヴァンがホドにいたことなど知っている筈もないために。
「・・・・・・正直な事を言うなら、私は大丈夫だと思ったのだ・・・確かにヴァンはホドの後は憔悴しきった様子でいたが、それでも時が経つにつれ問題がないというように回復していき立ち直っていった。その姿から私は次期ユリアシティの市長としての役割をヴァンに任せることも考えた上で、預言の事を明かしたがすんなりと受け入れた様子にヴァンもまた敬虔なローレライ教団の信者なのだと思ったのだ・・・」
「待って、お祖父様・・・ユリアシティの次期市長？私はそんなこと聞いてないわ・・・兄さんがそういう立場になるって・・・」
「・・・今までのユリアシティの歴代の市長はユリアの血族と言うか、私達の先祖が大体勤めてきた。と言っても全員が全員そうであったわけではないようだが、基本的にユリアの血族であることから市長の役目を求められてきたのだ。だからこそ私は私が市長の役目を果たせなくなる時にはヴァンを市長にしようと考えていた。それが慣例として自然な流れだと思ったからこそだ・・・だがそれも、今となってはヴァンからして迷惑以外の何物でもなかったのだろうな・・・」
それでも何とか自身の考えを明かしていく市長だが聞き逃せない部分・・・ヴァンが市長になる予定と聞きティアが初めて会話の中で興味を示し、市長は過去の流れにそういう見られかたがあるからと説明した上で辛そうに表情を歪める。ヴァンの行動の理由を知ってしまったが故に、そういった考えは一層不快にしか思えなかっただろうと理解した為に。











．