心は揺れ動く、良くも悪くも

「・・・しかし、随分とティアは大人しい物だったな。今までならどうにか反論と言うか、何かしらしていたと思うのだが・・・」
・・・そう、ティアである。
ウィルが静かに呟きながらティアの方に視線を向けると、その背中は力がなく煤けていて自信の全く感じれない物だった。
「彼女も色々堪えたのではないかしら・・・でもあまり本人に聞こえそうな所で言わない方がいいわ、もし聞かれたら気分が良くないでしょうしここで騒がれたら人目につくから」
「・・・そうだな、そうしよう」
ジュディスがその姿に理由を予測しつつ黙るように言えば、ウィルも含め皆が頷く。





















・・・それで船に乗った一同だが、特に何か起こるでもなくダアトの港に着いた。
「・・・さて、ユリアシティの場所まで案内してくださいティア。アッシュやイオン様なら場所は知っているのでしょうが、貴女はユリアシティの住民ですからより確実に行き来出来る筈です」
「・・・はい、分かりました。ついてきてください・・・」
船の前で一同が集まる中、眼鏡を押さえながらジェイドから案内を頼まれたティアは頷いて先を歩き出す。ただ言葉面だけなら普通の会話に聞こえるかもしれないが、その言葉に感情がこもっておらず薄ら寒いやり取りにしか聞こえなかった・・・









・・・そして港を出てアラミス湧水洞に辿り着き、道中何事もなくユリアロードまで来た一行はティア主導の元でユリアロードを通る。



「・・・ここがユリアシティですか・・・僕も来たのは初めてになります」
「・・・アッシュはどうなんですか?」
「俺も来たことはねぇ。こんな所、用もだが興味もなかったからな」
そしてユリアロードを通ってユリアシティに来た一行の中で辺りを見渡しながら珍しそうにイオンが口を開き、ナタリアの疑問の声にアッシュは大して興味などなかったと返す。
「・・・お祖父様に会いに行きます。付いてきてください」
その中で淡々とと言うよりは最早ヤケになってるのではとばかりに感情の見えない声で案内というティアに、他の面々は追求の声を上げることなく付いていく。



・・・そして一行は程なくして、市長の部屋に辿り着く。
「・・・ティア、か?」
「・・・はい、そうですが・・・何か?」
「い、いや・・・お前の様子がここを出る前と、あまりにも違うものだからついな・・・」
「そうですか・・・」
机に座っていた市長は先頭にいたティアの様子に目を疑うが、全く目に光を灯していない様子にそれ以上追求出来ずにどもりながら大したことないと返す。
「そ、それより・・・こちらの方々はどうしたのだ、ティア・・・?」
「その件でしたら、私が説明しましょう。そちらの方が色々と手っ取り早いですからね」
それでも何とか用向きを問おうとする市長にジェイドが答える。ティアに発言させる気はないと言わんばかりに横入りする形で。















・・・そこからジェイドの一連の流れの説明に市長は始めは信じられないとばかりに首を傾げたりするばかりであった。だが外殻大地が実はそう長いこと持たない見込みがあることや、ヴァンがそれを知った上で預言を壊す為にあえて行動していることを聞き、徐々に表情を変えていった。信じたくないが信じないといけない、そう突き付けられ苦味ばしった表情に。



「・・・ここまでは大丈夫ですか、市長?」
「・・・正直、信じたくないという気持ちではあります。ですがシュレーの丘のセフィロトがそう長い時間持たなかったと貴殿方の操作がなければ遠くない内に落ちていた。そしてヴァン達がその事実を調べて知っていたと聞かされては・・・とても、嘘だとは言えません・・・」
そして一旦中断して確認を取るジェイドに市長はうつむきがちになりながら答える。話の中身は嫌でも本当の事だと受け入れてはいると・・・












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